映画レビュー

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生身の人間でも幽霊並みに人を恐怖させることができる

昔に比べてホラー映画というものはどんどんと怖さを増してきている。
幽霊たちはテレビから飛び出したり、携帯に電話をかけて呪ったり、青白い肌に真っ黒な目をするメイクアップスキルまで身につけ日々人々に恐怖を与えている。
おまけに彼らが出てくる瞬間は「ドーン!!」という大きな効果音が鳴り響き、心臓が一瞬止まるのではないかという驚きまでも与える。

 

では、幽霊のようにテレビから飛び出たりできない私たちはどんな風に人を恐怖させるのだろうか。
例えば暗闇で物陰に隠れ「ワッ!!」と大きな声を出せばよほどの強心臓な人じゃない限りは驚かせることができるだろう。
しかし、そのような驚きはごくごく瞬発的なものであってその人の脳裏にこびりついて離れないような恐怖体験とはならない。
このように、生身の私たちが幽霊のように人を恐怖させるのはとても難しい。

 

しかし、アルフレッド・ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」という映画は我々生身の人間に「生身の人間でも幽霊並みに人を恐怖させることができる」という勇気を与えてくれる。
そんな勇気要らないよ、という人が大半なのは百も承知だが、とにかくこの映画では生身の人間がいついかなる状況でも人を恐怖させるかという戦法が多く隠されている。
しかもそれらは場所や、時間をも問わない。
今日はそんな「見知らぬ乗客」という映画について書いてみよう。

 

「見知らぬ乗客」は1951年に公開されたアメリカ映画。
「太陽がいっぱい」や「殺意の迷宮」で知られるパトリシア・ハイスミスの同名小説をヒッチコックが映画化した。
出演にはファーリー・グレンジャーやロバート・ウォーカー、ルース・ローマン。そしてヒッチコックの実の娘であるパトリシア・ヒッチコックも出演している。

 

話の大筋としては
アマチュアのテニス選手であるガイ(演:ファーリー・グレンジャー)がある日電車でブルーノと名乗る謎の男(ロバート・ウォーカー)に話しかけられる。
ブルーノはどこから仕入れたのかガイの妻との不仲、そして不倫相手の情報を握っており、ブルーノにも憎い父親がいることから動機のない交換殺人をすれば完全犯罪が成立するはずだと持ちかける。
一笑に付したガイだったがある日ガイの妻のミリアムが遺体で発見される。
そこからガイの謎の男ブルーノに付きまとわれる恐怖の日々が始まる。
といった感じ。

 

もちろん、冒頭に記したようにこの映画には幽霊のような飛び道具な恐怖は一切出てこない。
それなのにこのブルーノという男は幽霊よりよほど恐ろしい。
このブルーノという男は背格好はまさに「普通」を絵に描いたような男で、身なりもよく社交的で一言二言話した限りはまったく恐ろしい人物には感じられない。
しかしそんな「普通の男」がヒッチコックの手にかかると世にも恐ろしい人物になるから不思議だ。
この映画でのブルーノという男はヒッチコックが「人を怖がらせる、ゾっとさせるテクニックをたくさん持っているか」というのを体現する役割を担っている。
ヒッチコックが持つ「恐怖の手札」がこの男に宿され、様々な手段でこちらの肝を冷やしてくる。

 

例えばテニスコートでの有名なシーンがある。
主人公のガイがテニスコート脇で試合を観ていると観客席にいるある男に気づく。
観客全員がテニスの試合に見入り、両選手のラリーを追うために首を左右にせわしなく動かしている。
しかしたった一人だけそんな観客とは全く違い、薄笑いしながらこちらをジッーと見つめる男がいる。
そう、ブルーノだ。
もちろん暗闇の中にブルーノを一人ポツンと立たせ、薄笑いを浮かべながらこちらをジーっと見つめるというシーンでも怖いは怖いのだろう。
しかしヒッチコックは白昼堂々、しかも大観衆のど真ん中にブルーノという異質の人物を置き、他の人間と全く違う行動をさせる事で観ている人の脳裏にこびりつくよな恐怖を演出したのだ。

 

さらには遊園地でガイの妻ミリアムを殺すシーンでは、遊園地という晴れの場には場違いなタキシード姿にハットという正装のブルーノを置く。
こうして遊園地の喧騒の中、彼の周りだけが負で覆われる効果を生み出す。
そしてミリアム一点を見つめ、またも薄ら笑いを浮かべ、気がつくと彼女の隣にいる。
ここでもブルーノが持つ異質な恐怖が観客の脳裏にこびりつくのだ。

 

そんな具合にこの映画では他にもブルーノという男を使った、ヒッチコックが持つ無数の「恐怖の手札」コレクションの一端を観ることができる。
それによって少し人間同士のドラマが希薄になりつつある印象が無いではないが、そんな欠点もヒッチコックのテクニックを存分に味わえるというプラスの面で充分に補える作品であることは間違いない。

 

さらにこの映画「恐怖の手札」以外に、編集、撮影、構図の観点からもヒッチコックのテクニックを存分に楽しむことができる。
是非ともこの映画を観終わって、ガイとブルーノの関係性を充分に理解した上で冒頭の二人が出会うまでのシーンを見返してみてほしい。
冒頭の数分間、ある二人の男が列車に乗るまでの様子が足元だけのカットで交互に描かれている。
そこには彼らの服装が端的に表れ、対比されている。
一方は綺麗に着飾った男、一方はラフではあるがそれなりの社会性を持つ男。
一方は少し神経質な印象を与える歩き方、一方は細かいことには気にしない堂々とした歩き方。
それらは交互にブルーノとガイのパーソナリティを端的に表している。
そして二人の会話は、その二人の足がぶつかり互いに「すみません」と挨拶を交わすところから始まる。
物語の始まりとそこに行き着くまでの二人の経過を端的に対比的に、そしてリズミカルに表現することで「あ、何かが始まる…」と観ている側の没入スイッチを押すような仕組みが冒頭から仕組まれているのだ。
ヒッチコックというと「計算され尽くした」「完璧な」という表現をよくされるが、まさにこの「見知らぬ乗客」の冒頭シーンではその技術を視覚的にとても分かりやすく感じることができるので是非とも注目してほしい。

 

少し蛇足な話かもしれないが、この映画を観ていて「なぜブルーノはガイにあそこまで執着心を燃やすのだろう。」という疑念を持った人がいるかもしれない。
一応には彼の提案した交換殺人の一旦をガイが担っているからという見方が普通ではあるが、それにしてもブルーノのつきまとい方は異常だ。
これは筆者も原作を読んでいないので確かなことは言えないが、ブルーノが同性愛者であるという見方をすることもできるようだ。
確かにパトリシア・ハイスミスの他作「太陽がいっぱい」も淀川長治氏が言及したように同性愛的なメッセージ性が多分にあったし、同じくハイスミスの作品の「キャロル」、この小説は実は長らく作者不明だった人気のレズビアン小説であったのだが、ハイスミスが後年に作者が自分であり、そして自分の経験を元にして書いたと公言しているのだ。
そしてこの「見知らぬ乗客」が公開された当時のハリウッドではヘイズコードという規制がしかれていて、同性愛についてや淫らなシーンなどは映画に入れてはいけないという決まりになっていた。
であるからにしてブルーノがガイに寄せる想いというのは直接的に描くことができず、且つ原作者のハイスミスも自分の社会的立場を鑑みあからさまにブルーノのセクシャリティを描くことができなかったために、ブルーノのガイへの執着心というのはあのような描き方になったのではないかと思われる。
まぁそれがブルーノの正体不明な恐怖感につながっている気もしなくはないが。
仮にブルーノが同性愛者であるという設定の場合、冒頭の二人の出会いはより興味深い。
ガイにとっては恐怖との出会いであり、
ブルーノにとっては運命との出会いなのである。
ここにも大きな対比が生まれているのだ。

 

映画というのは掘り下げていくとスクリーンには写っていない様々な側面があり、それを知ることでまた新しい映画や、新しい映画への価値観が生まれるのではないかと思う。

 

と、話が脇道にそれたが、もちろんこの「見知らぬ乗客」は言わずもがなヒッチコックの頭のストックの「恐怖の手札」にゾクゾクするのが最も楽しい見方だと思う。

 

幽霊ではない生身の我々がいかにして他人を恐怖に陥れるか、
そこに繋がるヒントやテクニックがたくさん詰まっている。「見知らぬ乗客は」そんな映画だ。

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