宮崎駿対黒澤明 対談B 音響効果の実写とアニメの違いについて

アニメと実写の音響効果の違い

1993年 5月6日放送 「映画に恋して愛して生きて」より

 

宮崎 「外国を舞台にしてアニメーションつくりますとね、街が出てきますよね。ほんと困っちゃうんです。外国の街の石畳で古い時代の車が走ってたってなると音響効果がもう無理ですね。なんかこれどうかって持ってきてもこれは東京だなんてすぐバレちゃうんですよね。いま小鳥の音を撮りたいっていっても、どこ行っても車の音がはいっちゃうんですよね。離島に行かないといけない、で離島へ行っちゃうと今度は風の音がはいっちゃうっていう」

 

黒澤 「三縄くんっていうんですけど音を入れるとても優秀な人がいてるんですよ。例えば雨なんかでもカットが変わるとちゃんと雨の音も変わってるんですよ。ほんとに縁の下の力持ちですけどね、ちゃんとお客さんも感じてるんですよ。で変なリアリティが出るんだけど」

 

宮崎 「現場で音を撮るんですか?」

 

黒澤 「もちろん。どうしてもアフレコをしないといけないときでも現場の音は撮っておくんです、どんなときでも。でそれを聞かせながらアフレコをするんです。そうじゃないとその時の感じを忘れちゃいますからね」

 

宮崎 「いやーアニメーションは安手にやってます 笑」

 

黒澤 「いや、あれはあれで大変ですよ」

 

宮崎 「やっぱり仕上げ段階で時間を掛けてないんですよね」

 

黒澤 「アメリカなんかだと大作品だと一年近く編集やってますからね」

 

 

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宮崎 「僕らは編集なんてのは画は分かってるわけですから。どっからはじまってどこで終わるのかって。プログラム通り繋げていくだけなんですけど」

 

黒澤 「合戦の撮影はだいたい3回やるんですよ。でレンズを換えて撮影して、でキーカットを見ながら編集していけばそんなに大変ではないんですけどね。でカットが足りない場合はフィルム裏返しにして使ったりしてね。誰もわかんないんですよ」

 

宮崎 「観客のセンサーってのは映像と交互しますよね」

 

黒澤 「僕はまたレンズの使い方が特別なんでね。例えば全体を撮っているカメラがありますよね。である部分に寄ったカメラがある。でもこの寄ったカメラが一番遠いんですよ。だから俳優さんがカメラを意識しないんですよね。カメラを意識できないんで全身で演技するしかないんですよね。そういう風に追い込んじゃう」

 

黒澤 「僕は2人で会話しているカットで大切なのは話をしているカットではなく聞いているカットなんですよ」

 

宮崎 「ぶつ切りにしてモンタージュしていけばいいってことじゃないですよね」

 

黒澤 「ソビエトのモンタージュ論ってのは多分に結果があるんですよ。間違ってるとかね」

 

宮崎 「モンタージュ論ってのは出来上がってくる過程で作られたもは面白かったんですよね」

 

黒澤 「そう。まず俳優さんが演技しているんですよ。それを物体みたいに考えるのがまず間違いですよ。それをルビチなんかが痛烈に批判しているけどね」

 

 

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画コンテについて

 

宮崎 「まあだだよ」の絵コンテを見ながら
    「まずびっくりしちゃったんですけどね、大変な労力ですね」

 

黒澤 「いや、そうでもないですよ。ひょいひょいと描いていくだけですから、努力していくわけではないですから」

 

宮崎 「描く段階で役者が決まっていますね」

 

黒澤 「いやね、それね最初は似てないんですけど、描いていくうちになんとなくイタズラ心に似せて描いたほうが面白いなと思って」

 

黒澤 「これ、雨のところがたくさんあるでしょ。撮影の時は1カットで撮っちゃったんですよ。1カットで撮れるようになるまでいろいろ考えてるんですよ。コンテってのはね、なんで描いてるかというと、こういう感じってのをスタッフに教えると同時に、絵に描くってことはなんでも具体的に分かっていないとか描けないでしょ。演出する上でも大変勉強になるんですよ」

 

宮崎 「例えばこういう画をお描きになってるじゃないですか、このセットはお金掛かるなとか考えちゃったりしますよね 笑」

 

黒澤 「映画ってのはお金掛かりますからね。例えば焼け跡ってのは大変なんでね、富士山の火山灰のところにセット建てたら黒くする必要はないんですよ」

 

宮崎 「映画が扱う時代の幅が狭くなりましたよね」

 

黒澤 「ええ。第一ねその時代を撮ろうと思ったらロケーションが困っちゃうんですよね」

 

 

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黒澤 「今度の作品でもその当時の洋服は衣装屋に全部あるんですよ。でも、どれも着れないんですよ。みんな身体が大きくなっちゃって。でもね、桶狭間なんかの鎧なんかはずいぶん大きいですね。戦国時代のものは大きいですね」

 

宮崎 「江戸時代でちっちゃくなってるんですよね」

 

黒澤 「徳川300年で体格が悪くなってるんですよ。でもそんなに変わるものかなって思ってたら、昭和の初期と今とじゃ変わっちゃってるですよね。もう全然入らないんですよ、今の連中には」

 

宮崎 「自分にとっての時代劇ってのはその周りをぐるぐる回ってるだけでいっこうにできないんですよね。次回作は?って聞かれたら10年前から時代劇って言ってはいるんですが」

 

黒澤 「七人の侍だって最初はある侍の一日を書いてみようっていってたんですよ。でも細かいことがわかんないんですよ、書きようがないから困っちゃって。いろいろ調べていたら、ある村が野武士の襲撃を防ぐために侍を雇って襲撃を防いだってのがあったんですよ。それでこれやろうよってことになったんですよ」

 

宮崎 「なるほど」

 

黒澤 「ほんのわずかな記事だったんですけど、それから色々自由に想像してね。で、タイトルはどうなのって?プロデューサーが言うから、七人の侍って書いて。じゃあそれいいってなってすぐに決まったんですよ」

 

宮崎 「題がなかなか決まらないやつは駄目ですもんね」

 

黒澤 「でも今度のはずいぶん題は困ったね。最後にやぶれかぶれで「まあだだよ」って出したら息子(プロデューサー)もこれいいやって」

 

終わり

 

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