黒澤明「どん底」ここが凄い!ポイント
喜劇役者たちの演技が凄い!
撮影期間が異例の短さ!
ミュージカル映画顔負けのラストが凄い!
マルチカム撮影が凄い!
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ゴーリキーの戯曲が時代劇に
舞台を江戸時代の棟割長屋にした以外は、ゴーリキーの戯曲を忠実に再現して映画化した作品。
「生きものの記録」で実験的に使用したマルチカム方式は、狭いセット内で大きな動きのある芝居の多いこの作品で非常に有効に利用され、素晴らしい効果を上げており、リハーサルも入念に行なった為、一ヶ月で終了という驚異的なスピードでクランクアップした。
とくにラストのシーンなどは、ミュージカル映画顔負けのリズム感が、画面全体から溢れている。
この映画は喜劇役者が名を連ね、好演している。
悲劇的な過去を持つ役者くずれを演じるのが藤原釜足。
身体が小さかった為、オペラもコーラスボーイから役者に転じた人である。
1930年に榎本健一(エノケン)に誘われて、一座に参加、エノケンが対座後は浅草玉木座の主演級となる。
駕籠かき役の渡辺篤は浅草オペラのコーラスボーイの出身で、松竹映画も長く、日本製本格トーキー映画第一作「マダムと女房」で田中絹江の夫役をユーモラスに演じ、やがて古川緑派の相手役として有楽座の舞台に立ち、東宝映画に出た。
狂言回し的な役どころで遊び人を演じた三井弘次は黒澤作品の顔として知られるが、意外なことに大きな役は本作品のみ。
松竹映画の与太者シリーズで知られ、小津安二郎の「非常線の女」に起用されて発奮する。
彼の捨てセリフと共に、拍子木の音がして暗転するラスト・ショットは秀逸すぎ。
お遍路役の左ト全は、帝劇歌劇部の補欠で「ブン大将」のコーラスボーイが出発点。
映画初出演は今井正の「女の顔」でこの時55歳。以後、とぼけた老人役で映画界に進出する。※1
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低予算早撮り 演者が芸達者
この作品は三船敏郎が出演しながら志村喬が出演していない唯一の黒澤作品で、
黒澤映画には珍しく、低予算で早撮りで仕上がった作品。
どうも救いようのない社会最底辺の人たちの生活をこれでもかと見せつけられているのに、不思議と、しんどくならない。
もちろん題名のとおり「どん底」具合はその名のとおりの映画なのですが、吹っ切れた明るさのようなものがこの映画には存在しています。
三船敏郎、香川京子、山田五十鈴の間で三角関係も描かれていますが、「白痴」のようなしんどさはありません。
人間ってバカやなって思ってほほえましくもあります。
こんな感じに思える理由はそういう演出を、黒澤が意図的にしたからということと、一番大きいのは役者たちの芸達者ぶりってことでしょうか。
この「どん底」は役者たちの演技を楽しむ映画です。
黒澤作品の中でも一二を争う演技が秀逸な作品だと
個人的見解で思っています。
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かんたんなあらすじ
陽も当たらない湿った長屋。周りは石垣で囲まれている。
そこに住む貧しい人々。社会の底辺の人間。
桶屋、飴売り、、役者くずれ、駕籠かき等、
それぞれがどん底から這い上がろうとしながらも、這い上がれない姿を描く。
製作:黒澤明 本木荘二郎
脚本:黒澤明 小国英雄
原作:ゴーリキー「どん底」
撮影:山崎市雄
美術:村木与四郎
照明:森茂
音楽:佐藤勝
助監督:野長瀬三摩地 田実泰良 坂野義光 金子敏
出演:三船敏郎 香川京子 山田五十鈴 中村鴈治郎 左ト全 藤原釜足 三井弘次
※1 文藝春秋発行 小林信彦著書 「黒澤明という時代」より抜粋
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