武田信玄の影武者となった男の、数奇な半生を描いた時代劇。
予算の問題で制作が難航したが、黒澤を敬愛する「ゴッドファーザー」のフランシス・フォード・コッポラと「スターウォーズ」のジョージ・ルーカスが、20世紀フォックスに声をかけて予算が確保された。
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勝新太郎VS黒澤明
当初、信玄と影武者の2役は勝新太郎が演じ、撮影が進められていたが、黒澤と意見が衝突し途中降板となり、仲代達矢が代役とつとめた。
降板の原因はリハーサルの2日目に勝が現場でビデオをまわし始めたことがきっかけ。
「いや、俺はねいつだってやってんの。てめえの芝居が見えないからさ。それを見て研究するんだよ」
勝は黒澤にもそう説明したが黒澤は、
「断る!そんなことされたんじゃ気が散ってしょうがない。あんたは自分の役に集中していればそれでいいんだ。余計なことをするんじゃない!」
勝はしばらく棒立ちになり、やがて衣装部屋でかつらをむしりとって出て行った。
止めてくれると思ったのだろうが、黒澤は止めなかったらしい。
勝は殴りかかろうとしたが、東宝の田中友幸プロデューサーに止められたという。
勝の代役で仲代達矢が主役を演じて、『影武者』は見事カンヌ映画祭でパルムドールを獲得し、黒澤VS勝は黒澤の勝ちで終わったゆに見えた。
しかし、世間では「勝の影武者が見たかった」という声が後を絶たなかった。
後に黒澤は大林宣彦監督に
「あれ、勝がやれば、凄い映画になってたよ。みんな残念だというけど、一番残念だと思っているのはボクだよ」
と語ったという。
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黒澤明監督『影武者』 勝新?黒澤?どっちが悪い?主役交代劇の真相はこれだ!
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構想では武田兄弟役で勝新太郎と若山富三郎を予定していた
黒澤のはじめの構想では、信玄に勝新太郎、信玄の弟に若山富三郎(勝と実兄弟)を予定していた。
しかし若山は、
「まことにありがたいお話ですが、私は受けるわけには行きません。先生(黒澤)と勝とでは必ず揉めるでしょう。その時、私が巻き込まれたら、立つ瀬がありません」
として話をすぐに断ったという。※4
勝が降板し仲代が代役になったことで、勝に似せて演技をしていた信玄の弟役の山崎努に似せて、仲代が演技するというややこしい状態になってしまったという。
しかし完成した作品は、撮影中のトラブルの影響など感じさせない見事な出来栄えであり、赤、緑、黒などで綺麗に色分けされた鎧兜の武者たちの合戦シーンは史実には反しているものの、映像的に美しく、また分かりやすく、特に海外で絶賛され、カンヌ国際映画祭では見事グランプリを受賞した。
外国版プロデューサーには、黒澤を敬愛する2人のハリウッド映画監督、当時世界的な名声を得ていたフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが担当したことで、クロサワという名の威光が更に上がることとなった。
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あらすじ
戦国時代。武田信玄は上洛を睨み、東三河で野田城に攻め込んでいた。
ある夜、信玄が城内から射撃される事件が起こり、武田軍は甲斐へと引き返す。
しかしその道中で、信玄は息絶える。
信玄の遺言は、
「自分の死を絶対の秘密とし、3年間は動かずに領地を固め、幼い嫡孫・竹丸が成長するまで力を貸して欲しい」
というもの。
重臣たちは信玄の死を内輪にも明かさず、信玄にそっくりな盗人を、信玄の影武者として立てることにした。
製作:黒澤明 田中友幸
脚本:井手雅人 黒澤明
演出補:本多猪四郎
撮影:斉藤孝雄
撮影協力:中井朝一 宮川一夫
美術:村木与四郎
照明:佐野武治
音楽:池部晋一郎
助監督:岡田文亮 井上英之 大河原孝夫
出演:仲代達矢 山崎努 萩原健一 隆大介 桃井かおり 賠償美津子 油井昌由樹
ウィキペディア フリー百科事典「黒澤明」より引用
河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より引用
脚注
※1 文藝春秋発行 小林信彦著書 「黒澤明という時代」より抜粋
※2 やのまん発行 塩澤幸登著書 「黒澤明 大好き!」より抜粋
※3 毎日新聞社発行 堀川弘通著書 「評伝 黒澤明」より抜粋
※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋
※5 文藝春秋発行 田草川弘著書 「黒澤明VSハリウッド トラ・トラ・トラ!その謎のすべて」より抜粋
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映像の世紀を駆け抜けた壮絶な人生がヤバい… 〜黒澤明の生い立ちから晩年まで〜
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