黒澤明初のカラー作品「どですかでん」は色彩を楽しむ映画である!

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四騎の会制作「どですかでん」

山本周五郎「季節のない街」を映画化

 

黒澤は木下恵介、市川崑、小林正樹らの監督に呼びかけ、低予算で映画を撮るというコンセプトのもと、四騎の会という芸術家集団を結成。

 

この「四騎の会」制作の、最初で最後の作品が「どですかでん」である。

 

思ったような色が出せないという理由で、長い間カラーで撮ること拒否してきた黒澤の初のカラー作品である。

 

色彩にこだわるあまり、地面にまでペンキを彩色した。

 

黒澤作品の中には「素晴らしき日曜日」のようなメルヘン的要素を持つ作品が、何本かあるが、本作はその代表作といっていいだろうか。

 

前作の赤ひげに続き山本周五郎の小説を原作に、最貧下の貧民街に住む人々を、主人公に8つのエピソードを絡みあわせている。

 

人間の本質を描いたシビアで残酷な内容でありながら、ユーモラスで心なごむような仕上がりになっているところに、黒澤らしさ、黒澤ヒューマニズムが出ている。

 

登場人物は今までの黒澤映画にはなかった倫理観がぶっ飛んでいる人々が登場し、過酷な人生、人間関係を切羽詰ったユーモア感で生き抜いていく。

 

黒澤は助監督時代にエンケン主演の喜劇を何本も担当していた経験があり、漫才界から三波伸介、小島三児などの喜劇役者の個性をつかんだ演出が本作品でも冴えている。

 

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前衛映画「どですかでん」

 

こんなにも衝撃があって、哀しくて、せつなくて、画が綺麗で、芝居のセリフが良くて、ユーモアがある作品があるだろうか。「生きる」「赤ひげ」などが黒澤ヒューマニズムの最高峰として評価されているが、個人的にはこれがダントツで人間を描いていると思います。前衛映画といって差し支えてないでしょう。

 

七人の侍」を撮った監督が、「隠し砦の三悪人」を撮った監督が、「用心棒」を撮ったエンターテイメントの巨匠が、まさかこんな前衛映画を創るとは。ラース・フォントリアーや、ビンセント・ギャロや、レオス・カラックスの映画を観ているような感じになる。

 

感性のふり幅が凄い。いや、感性は点なんで、幅で例えるのはよろしくないですね。えっと、「表現」のふり幅が凄いです。

 

冒頭の武満徹によるオープニングテーマでまずいきなりやられてしまいます。
切なくて愛らしくて。

 

そして知恵遅れの六ちゃん。この六ちゃんのインパクトは凄まじいものがあります。

 

この六ちゃんの街に住む人達。かなり皆さんイッてます。

 

そのイッている演技とセリフのレベルの高さ。こういう世界観。こういう空気。それを色彩豊かな画でパッケージング。

 

黒澤映画で唯一、下半身のだらしない人たちが出てくる映画かもしれません。
そのカスぶりには、えげつないものがあります。

 

娘を妊娠させるろくでもない親父、
旦那以外の男の子供を産み、旦那に育てさせる女、
女房旦那を交換する夫婦、
妻の浮気をずっと許せず苦しむ男、

 

その他、苦しむ息子を見殺して死なせてしまう乞食の父親、

 

そしてエアー電車を毎日運転する六ちゃん。

 

いままで観た映画の中で、一番エグい内容かもしれません。直接的なエロの表現やグロテスクな画はありませんが。

 

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あらすじ

黒澤明,どですかでん

 

とある街外れの貧しい地域。知恵遅れの六ちゃんは、毎日近所の空き地でエアー電車を運転している。

 

六ちゃんは自分が本当の運転手でエアー電車を本気で動かしている…

 

乞食の父親は、立てれるはずのないマイホームのことについて、乞食の息子に毎日話している…

 

穏やかな性格のサラリーマンの島さんは同僚を家に連れてくる。妻の島さんへの態度の悪さに、たまらず同僚が悪口を言うが、島さんは…

 

妻が浮気性の内職職人の良太郎は、たくさんの子供を育てている。子供たちが、たとえ妻の浮気相手の子だとしても…

 

この街の人たちは変わった人ばかり。六ちゃんは今日も電車を走らせる。どですかでん どですかでん…

企画:四騎の会
製作:黒澤明 松江陽一
脚本:黒澤明 小国英雄 橋本忍
原作:山本周五郎「季節のない街」
撮影:斉藤孝雄
美術:村木与四郎
照明:森弘光
音楽:武満徹
助監督:大森健次郎 川崎義祐 橋本幸治 
出演:頭師佳孝 菅井きん 伴淳三郎 三波伸介 丹下キヨ子 殿村敏之

ウィキペディア フリー百科事典「黒澤明」より引用
河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より引用
脚注
※1 文藝春秋発行 小林信彦著書 「黒澤明という時代」より抜粋
※2 やのまん発行 塩澤幸登著書 「黒澤明 大好き!」より抜粋
※3 毎日新聞社発行 堀川弘通著書 「評伝 黒澤明」より抜粋
※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋
※5 文藝春秋発行 田草川弘著書 「黒澤明VSハリウッド トラ・トラ・トラ!その謎のすべて」より抜粋

 

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