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一番美しく
軍需工場でのく女子挺身隊の活動をセミドキュメンタリータッチで描く。
挺身隊員を演じる女優陣から、職業的なにおいや、羞恥心を取り去るため、日本光学の寮に入れ、駆け足の訓練から始め職場にも配慮し工員たちと同じ労働を割り当てた。
その甲斐あって、本物の挺身隊員と同様の自然な演技が引き出せたが、連日8時間以上の労働をこなした女優陣からは不満の声があがり、その代表として黒澤に食ってかかったのが、後に黒澤夫人となる矢口陽子だった。
2人はこの映画で恋仲になったと誤解されているが、実際はもっと後で、プロデューサーの森田信義の仲介で交際を始めた。
戦意高揚の為に撮られた作品であるが、挺身隊員が一心不乱に働く姿は、デフォルメされ不気味にさえ感じ、とても戦意高揚になるとはおもえない仕上がりである。
しかしこの姿は後の「我が青春に悔いなし」の原節子に引き継がれ、男女という性別を超越した一人の人間として描かれることになった。※4
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黒澤明が恋をする為に作った作品?
時代劇評論家で黒澤フリークの春日太一氏が、『一番美しく』について、黒澤が奥さんと恋する為に制作したのでは?とも言っています。
『一番美しく』は黒澤のようなホモソーシャルの塊のような人間が、女性しか出ない映画を作ったということが衝撃であった。黒澤のこの作品を指して、「私の一番可愛い作品です」って言っているんですね。
この映画は完全に黒澤が奥さんと恋する為にやってますよね。(主人公が後の黒澤夫人)
この映画は、戦意高揚映画で、国策映画ですよね。もともと海軍が『姿三四郎』を見て、こいつにゼロ戦に関する映画を作ってほしいと依頼があって、黒澤はそういうの大好きなんで、すごい喜んだが、結局、海軍に映画で使えるゼロ戦が残っていなくて、ボツになって、それに代わる映画を何か作れないかということでこれになったと。
内容的に完全にスポコン映画なんだけど、女性にやらせることによってスポコンの汗臭さを感じさせないというか、黒澤自身が恥ずかしくなくやっているのではないかと思うんですよね。
歌舞伎役者は男が女形になるから、ある種、ロマンチックなセリフを易々と云えたりするようなあの感じですよね。黒澤自身が女装してやってるような。普通にやればこれは男たちのドラマなんですよね。
黒澤の特徴としては女優が嫌いなんだろうなぁという、この映画をドキュメントタッチで撮ろうとしたことは、黒澤のホモソーシャル感ですよね。
普通の女優芝居を女優にさせないと。どこか宮崎駿さんに近い考え方なんだろうけど、気取りであったり、芝居気であったり、化粧の臭いであったり、そういった自意識を取り払って、本来のただの少女も戻してしまおうと思ったということで、彼女たちを本当の工場の寮に入れて、その生活を送らせたらしいんです。
だから女優さんから女優っぽさをどれだけ排除するかって作業を撮影前の段階でやっていたわけ。
それをやることによって、本来の彼女たちの魅力が浮かび上がってきて、黒澤にとっての「可愛い映画」になったというわけです。
そして女優の臭いを排除することによって、セミドキュメントタッチにすることによって、わざとらしい戦意高揚演出を排除できるという利点も黒澤明の中にあったのではないか。
つまり戦争から離れて物語を描けるのではないかと。この映画だけですからね、ここまで黒澤が女性をフューチャーした映画というのは。だからすごく大きな理由があると思うし。
『一番美しく』っていうタイトルがいいですよね。黒澤ってキャッチコピーの才能がある人ですよね。タイトルとコンセプトを2行で言ってしまうという。映画の内容を1行で語れない映画はダメだという伊丹万作流の教えを黒澤は受け継いでいますね。
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あらすじ
兵器に搭載される光学機器を生産している東亜光学平塚製作所では、戦時非常態勢により生産の倍増を計画発令する。
男子工員は通常の2倍、女子工員は1.5倍という目標数値が出されるが、女子組長の渡辺ツルを筆頭とする女子工員たちは、男子¥の半分ではなく、2/3を目標にしてくれと懇願、受け入れられる。
奮発する女子たちだが、目標達成は生易しくは無く、一時的に上昇した生産高は疲労や怪我、苛立ちから来る仲たがい等により下降する。
しかし、女子工員たちの寮母や工場の上司たちの暖かい協力、そしてさまざまな問題を試行錯誤しながら解決し、更に結束を固めた彼女たちの懸命な度欲は再び報われ始める。
『一番美しく』各サイトレビューまとめ
Yahoo!映画 3.5点
評価件数 38件
・今どきの女子とちっとも変わらない
・戦時下の軍需工場。そこで朝から晩まで働く女学生たちの奮闘振りをひたすら描く映画。
・美し過ぎて嫌気がさす「國民映画」
・日本人の精神的傾向=集団的共同体意識が浮かび上がってくる
・貴重な日本プロパガンダ映画であり反戦映画
・田舎の親たちを安心させるための作品
・戦意高揚作品っぽくなるのは致し方ない
・国策映画には違いないんですが…
・こういう映画を観ると、日本人は変わってないんだな・・・って、つくづく思う。
・活劇のないドラマだが黒澤の確かな編集力を感じる映画だ
・黒澤監督作には珍しく女性が主人公
映画.com 3.6点
2人
・要は反吐がでるようなプロパガンダ映画。
・普遍的な労働する人たちの素晴らしさを描かんとする、黒澤さんの優しさを感じました。
アマゾンレビュー 4.4点
9件のカスタマーレビュー
・素晴らしい青春映画
・これぞ父祖の血の流れ通へる土…
・女性集団(女子挺身隊)を描く唯一の黒澤作品
・時代を超えて、今でも十二分に楽しめる作品
・誤解を恐れずに言えば、美しい映画です。
・「撃ちてし止まむ」「情報局選定国民映画」の文字が出てくる、黒澤明監督の作品では唯一の戦意発揚映画。
・純粋に娯楽映画、青春映画としてつくられた感じ
・責任感、使命感、自己犠牲の精神
・日本国民は渡辺青年隊長(矢口陽子)の爪の垢を煎じて飲むべし。
フィルマークスレビュー 3.2点
214件のカスタマーレビュー
・あの開かずの踏切の開かせない、という威圧感が既に健在で良き。
・黒澤明による唯一の反骨的な戦意高揚映画。
・終わり方結構な胸グソの悪さ
・黒澤映画の中では、かなり評価は低い方
・国策映画として、あえて女工の話を選んだことに黒澤明の美学を感じる。
・ありきたりなプロパガンダで終わらない後の巨匠の魂を感じる
・当時の厳しい検閲や国への反骨精神を、うまく隠しながらも表現している。
・思ったより悪くなかったですね。
個人レビュー 3.7点
この作品は、プロパガンダ映画であるわけですが、決してそれに迎合していない作品に仕上がっているのではないでしょうか。
ドイツのナチス産のプロパガンダ映画とはまったく違う。戦争を通じて、そのころの日本人の強さと心の美しさが描かれている。
女性の目から戦争を見た映画としても素晴らしい内容になっています。
それにしても、この主人公の女性の責任感の強さや真面目さなどは、現代人の我々が学ぶべきことが多々あります。
あまり評価されない作品ですが、この映画が黒澤作品で一番好きという声もよく聞きます。
企画:伊藤基彦
製作:宇佐美仁
脚本:黒澤明
撮影:小原譲治
美術:安部輝明
照明:大沼正喜
音楽:鈴木静一
助監督:宇佐美仁 堀川弘通
出演:矢口陽子 志村喬 入江たか子 菅井一郎 清川荘司 谷間小百合
ウィキペディア フリー百科事典「黒澤明」より引用
河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より引用
脚注
※1 文藝春秋発行 小林信彦著書 「黒澤明という時代」より抜粋
※2 やのまん発行 塩澤幸登著書 「黒澤明 大好き!」より抜粋
※3 毎日新聞社発行 堀川弘通著書 「評伝 黒澤明」より抜粋
※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋
※5 文藝春秋発行 田草川弘著書 「黒澤明VSハリウッド トラ・トラ・トラ!その謎のすべて」より抜粋

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