黒澤明は運を持っている!「デルス・ウザーラ」でアカデミー賞を獲得!

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デルス・ウザーラ

白痴を撮った後、ロシアの探検家ウラジーミル・アルセーニエフの探検記を「エゾ探検記」として企画したが、結局その時は流れてしまった。

 

20年後、ソ連から黒澤に一本撮ってみないか?と依頼があり、70ミリの大作映画として完成したのがこの「デルス・ウザーラ」である。

 

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シベリアの密林に住む猟師と探検隊隊長の友情と師弟関係を中心に厳しい大自然と人間との壮絶な戦いが描かれる。

 

約8ヶ月間のシベリアロケを含む撮影は一年間にも亘り、その間に65歳の黒澤がとらえた極寒の冬、猛暑の夏などの映像は、映画史上に残る凄まじさがある。

 

ただでさえ厳しい自然環境の中でのロケなのに、ソ連製の撮影機材は粗悪な物が多く、フィルム感度も悪かった為、撮影は難航した。

 

しかしお金は出すが口はいっさい出さないソ連側の製作陣と熱意あふれるスタッフたちのおかげで、自由な作品作りができたという。

 

そして作品は見事、ソ連製の作品として1975年度アカデミー賞最優秀外国語映画大賞に輝き、モスクワ国際映画際でも金賞に輝く。

 

黒澤は自ら文章にしている通り、運か強い。

 

モスクワ国際映画際金賞は当然にしても、アカデミー賞最優秀外国語映画大賞を得たからである。

 

ほかにも様々な賞を得ているが、アカデミー賞はこういうときに大きく作用する。

 

七人の侍」「用心棒」のサムライ映画の監督が、こういう自然体の作品を作ったという意外性もあったろう。

 

結果からみて彼が《世界のクロサワ》になったのはこの一石があったからであると思う。※1

 

おすぎが語る『デルス・ウザーラ』の魅力

『デルス・ウザーラ』の虎の話は有名ですよね。サーカスみたいな虎を使いたくないと。

 

虎を捕まえたとロシアの軍の方から連絡があるわけね。生後3か月の虎。それが大きくなるまでに待てるかどうかということになるんですけれども。

 

結局は虎はすぐに大きくなって、いざ撮るんだけれども、撮るときにあぶないからと言って堀を作るのね、島の中に虎を入れて、デルス・ウザーラとキャピタンの二人が会ったときに真ん中に虎が居て、虎が顔をこっち向けてワっと吠えるので驚くというショットを撮って、黒澤さんは堀のこっちの方の、なおかつイントレの上で回しているんだけれども、虎がこっちを向かないんだって。

 

そうすると黒澤さんは「こっちを向け!」って虎に命令している 笑。動物にまで指示を出しちゃうというような話を聞くと、やっぱり現場が本当に好きなんだろうな、と思うんですよ。

 

あと、言葉が分からない状態でソ連に行くわけですね、野上さんと松江さんと。

 

向こうは「黒澤監督の言う通りやります」と言ってくれたんだけれども、急流を流されるシーンのところで移動撮影なんかがありますでしょう。

 

言葉が全然分からなくても「こうやりたい」と思うところで監督が言って、それを動かしていく力というのは、やっぱりすごいことですよね。

 

それに、『デルス・ウザーラ』は70ミリ映画なのね。それを撮ってなおかつ現像だって、モス・フィルムなんかの現像なんか日本とはまた違うでしょう。そんな中でのラストシーンのキャピタンとデルスが分かれるシーンなんかもう…。

 

黒澤さんの映画の別れというのは、とっても素晴らしいシーンをいくつか作っているのね。

 

そういうとき、『デルス・ウザーラ』はロシア映画なのに、とても日本人なのね。そこが私はすごいなって思うの。日本映画を撮っているんじゃないけれども、映画の世界の中で、日本のクロサワの世界をきちんとロシアでも撮れていたってことは凄いわ。

 

ラストの白樺林の中にデルスが埋葬されるシーンもいいけど、最初の探検が終わって雪景色の中をデルス・ウザーラが線路の斜面を登っていって「デルス!」「キャピターン!」と呼び交わす別離。あそこはいまだに喋っていても涙が出てくるくらい好きなのね。

 

やはりそれは黒澤さんの持っている、人間はどこか自分の決まった居場所にいなければ駄目なんだというのがわかる。町に生活を得たとき、デルスはやっぱり駄目になるわけじゃないですか。ああいう部分は私はとっても好きなんです。

 

※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋

 

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あらすじ

 

20世紀初頭、アルセーニエフ一行はシベリアの密林に調査の為、入っていく。
そこでゴリド人の猟師デルス・ウザーラに会う。

 

デルスは1人で密林に生きていた。

 

少数民族の1人であるデルスと、アルセーニエフ大尉とデルスの友情を、シベリアの広大な風景を背景に描かれる。

製作:ニコライ・ジソフ 松江陽一
脚本:黒澤明 ユーリー・ナギービン
原作:ウラジーミル・アルセーニエフ「シベリアの密林を行く」「デルス・ウザーラ」
撮影:中井朝一 ユーリー・ガンドマン
美術:ユーリー・ラクシャ
音楽:イサーク・シュワルツ
共同監督:川崎保 野上照代 
助監督:ウラジーミル・ワシリーエフ 箕島紀男
出演:ユーリー・サローミン マクシム・ムンズク スベトラーナ・ダニエルチェンコ

ウィキペディア フリー百科事典「黒澤明」より引用
河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より引用
脚注
※1 文藝春秋発行 小林信彦著書 「黒澤明という時代」より抜粋
※2 やのまん発行 塩澤幸登著書 「黒澤明 大好き!」より抜粋
※3 毎日新聞社発行 堀川弘通著書 「評伝 黒澤明」より抜粋
※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋
※5 文藝春秋発行 田草川弘著書 「黒澤明VSハリウッド トラ・トラ・トラ!その謎のすべて」より抜粋

 

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