「七人の侍」と製作者・本木荘二郎

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本木荘二郎の功績

「七人の侍」はある日の侍のセミ・ドキュメンタリーを描こうという企画でスタートした。

 

しかし、調べても調べても、その当時の事件の記録はあっても、生活や文化の記録がなので、企画は頓挫する。

 

次は発想をコロっと変えて、時代劇の剣豪のエピソードをまとめたオムニバス映画にしようと黒澤が提案。

 

橋本が第一稿を書くも、「全編クライマックスみたいな映画が作りたいんだけど、やっぱり無理だね」という黒澤の一言で没に。

 

 

「百姓が侍を雇って村を守る」

そして、武者修行中の侍は、どうやって日々の糧を得ていたのかという黒澤の疑問から、

 

「百姓が侍を雇って村を守る」

 

ということもあり得るという一つのリアリティある設定が生まれた。

 

これのヒントを与えたのが、プロデューサーの本木荘二郎である。

 

本木は「素晴らしい日曜日」以降の黒澤作品11作品を製作している黒澤の相棒と言ってもいい人物であったが、「蜘蛛巣城」以降は黒澤とは決裂してしまった。

 

本木は1977年、63歳で死去。晩年はピンク映画の製作に携わっていた。

 

山本嘉次郎監督に黒澤といっしょに仕えていた助監督時代を経て製作者に昇進した本木は有望な才人であったことは確かだ。

 

橋本忍が「百姓が侍を雇って村を守る」という設定が生まれた瞬間を自身の著書「映像の複眼」でこう述べている。

 

橋本 「本木さん、次の日に道場があればいいよ。しかし、もし無かったらどうするんだ。」

 

本木 「お寺へいけばいい」

 

橋本 「お寺?」

 

本木 「ああ、旅籠のない時代だからね。よんどころなく旅をする者には、寺院が擁護してくれる。

 

だから寺院を訪ねれば、飯を食わしてくれて、一晩泊めてくれて、翌朝出発するときは、朝飯を一握り持たせてくれる。」

 

橋本 「じゃあ道場もない、寺院もない。この場合はどうするんだ?」

 

本木 「同時はな、全国的に治安が悪く、山野には盗賊や山賊などがたむろし出没する時代だよ。

 

だからどこかの村へ入り、一晩寝ずに夜盗の番さえすれば、どこの村でも百姓が腹いっぱい食わしてくれるわけだ」

 

私は思わずドキッっとして、本木荘二郎にきき返した。

 

橋本 「百姓が侍を雇う?」

 

本木 「そうだよ」

 

私は瞬間に黒澤さんを見た。黒澤さんも強い衝撃を受けた目で私を見ている。2人は顔を見合し、無意識に強くうなずき合った。

 

黒澤 「できたな」

 

橋本 「できました」

 

2人のやりとりに本木はキョトンとしていたが、次の瞬間には何かを期待して固唾をのんだ。

※黒澤明の作劇術 古山敏幸 フィルムアート社 より引用

 

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