『天獄と地獄』のラストシーンで黒澤明が予期しなかった凄いことが起こった!?

スポンサーリンク

町山智浩の解説 「天国と地獄」

映画評論家で黒澤作品についても詳しい町山智浩氏の『天獄と地獄』の解説をご紹介します。

 

町山氏は、この映画『天獄と地獄』をはじめて観たとき、「え?これでいいの?」と思ってしまったらしい。

 

中学生ながら、これはちょっとダメなんじゃないのという違和感があったという。

 

その違和感や、黒澤監督自身も予期しなかったラストシーンについてたっぷり語っています。

 

スポンサーリンク

 

原作について

なぜこの映画が作られたのかというと、『87分署シリーズ』エド・マクベイン著 という小説がありまして、この小説を原作にした刑事ドラマが流行って、日本の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』や『大都会』や『特捜最前線』などにも影響をあたえたようなもので、その『87分署シリーズ』の10作目の『キングの身代金』が『天国と地獄』の原作。

 

黒澤監督は元々ミステリー小説の大ファンで、『用心棒』なんかも元々はダッシュ・ハメットの『血の罠』という小説を基に、シナリオを書き上げていますから、ミステリーを色々読んで、この『キングの身代金』の誘拐した子供が違う子供だったという設定を読んで、これで行こうと決めたというんですね。

 

で、前半にやたらと靴に関しての論争があるじゃないですか・あれは原作通りなんですね。子供がカウボーイの衣装を着ているところも原作通りなんですね。
しかし、原作と徹底的に違うところが、原作は身代金を渡すときに犯人を逮捕してそれで終わっっちゃうところ。

 

で、身代金を渡すところはキャデラックに乗りながら、キャデラックの車内電話で犯人と連絡を取りながら、車内からトランクを出すというトリックなんですけれど。最初それをやろうかと思ったらしいんですが、車の社内電話は当時日本にはないと。じゃあこれは使えないとなって、どうしよう、なにか走行、動くものの中から身代金を渡すという設定にはできないかというところで、話は膨らんでいったんです。映画の三分の二ぐらいはオリジナルなんです。

 

でも原作は犯人たちの隠れ家の様子もあるので、そうすると、サスペンスが沸かない、犯人側が同時に見えちゃうと一体誰が何の為に?みたいな部分がなくなってミステリーにならないと。

 

脚本チームが根をあげてしまって、じゃあ、誘拐された側だけでいこうとなって、結果的に前半、一時間、誘拐された権藤氏の自宅だけのシーンになってしまった。
あの部屋から一歩も出ないんですよ。

 

前半はずっと室内で舞台劇のよう

これは画期的なことで、今現在、当時もそうですけど、こういう映画を撮ろうとした場合、映画会社で撮るのは不可能です。10分に一回は絵代わりをしてくれということになってきますから。しかし黒澤監督は一気に押し切ってしまった。その時点で巨匠だから。

 

でそのために前半はずっと、室内で舞台劇のようになってしまった。緊迫したシーンなのでわざと緊張感を出すために、10分間ぐらいの長回しがあります。その間、いろんな人が出たり入ったりします。

 

で現場の役者が演技に集中するように、望遠レンズで撮っているんです。望遠レンズでとるとどうしてもレンズの性質上暗くなってしまうので、照明をバンバンにあてて、ピントをあわせていくという撮影方法になるので、現場は強い照明で温度が上がって、劇中に役者たちが流している無数の汗は、その為によるものだという。

 

 

暑さの黒澤流演出

この映画、一番印象として残るのは、暑さではないですか?みんな汗びっしょりかいてて、実際、室内のシーンはもの凄く暑かったらしいんですが、撮影は1月に行われている。真冬なんですね。これは初めて聞いたときにはびっくりしましたね。

 

役者たちが出している大量の汗は、霧吹きの水だそうで、真冬の寒い中に、霧吹きで水を掛けれれて、余計寒くなって、暑がっている演技をしていたという。

 

これは黒澤の持論で、寒い冬に暑い夏のシーンを撮るから、いい演技になるんだというもの。

 

スポンサーリンク

 

2000万円でチャーターした「こだま」での撮影

身代金の受け渡しシーンは、あれはこだまを借り切って撮影しています。でこれはすごく有名な話なんですけど、一回切りです。列車の中に8台のカメラをおいて、いくつかのカメラは、窓から外を写すと。

 

で、全員が最初から最後まで通しで芝居すると。だから失敗は許されないぞと。

 

仲代さんとか、当時の助監督の方もおっしゃってるんですが、この列車をチャーターするのにいくら掛かったと思ってるんだと。2000万円だと。おまえらトチったら200万円パーだぞと。物凄いプレッシャーがプロデューサーから
掛かったと。でもまあ、2000万円は今の価値でいうと1億円ふらいなんで、たぶんプレッシャーをかけるために大げさに言った金額でしょうが。

 

実際の本番は、後部車両のメインカメラが回っていなくて、加藤剛さんのシーンなんですが、そこだけ、後日、後部車両だけ借りて、取り直しとしたという。

 

黒澤明の凄まじいエゴにも近い拘り

ずっと身代金の電話を待っているシーンがあるじゃないですか、夕方になってきて、子供が2人いるでしょ。打ち合いごっごしてて、1人が打たれたっていって倒れるシーンでその時に窓から夜景が見えるんです。

 

その夜景で車のヘッドライトが何台も連なって移動していくってシーンがあるんです。

 

これは夕方なんで、帰宅する車のヘッドライトだろうと思わせるシーンがあるんですが、実は黒澤が、橋の上を車が何台も流れていく絵がとりたいっていうので、助監督全員で車乗って移動して撮影したっていう。つまり仕込みなんですよ。

 

しかも車のヘッドライトの向き的に考えると、普通はちゃんとライトの明かりが写らないので、車の上に照明をのっけて、撮影現場の方に照明を向けているんです。つまり映画写っているのは車のヘッドライトではなくて車の上にセッテイングされた照明のライトであったという。

 

音楽やモノクロへの拘り

黒澤作品としては初めてのステレオ録音。しかし、前半はずっと室内のシーンだからステレオでわざわざ録る必要もなかった。

 

でも、途中で窓をバッとあけるシーンがあって、窓をあけると音が右から左に突然動くところがある。
それを、そこを録りたいがためにステレオにしたという。

 

この映画は、最初のタイトルクレジットで女性のコーラスが入って、それから音楽なしですよ。そのあと三船敏郎が救出された子供を抱きしめるまで一切音楽が鳴らないんです。

 

黒澤明はすごいメリハリの演出なんです。

 

しかもシネスコなんですよね、シネマスコープ。シネスコの大画面なのに約1時間ほどずっと舞台劇。しかしそれが突然、場面転換で長いシネスコの画面を右から左へ特急列車が駆け抜ける。

 

こういうワンポイントのメリハリの為にためるんですね。黒澤明は。

 

何の為にやっているのかっていう見せ方と形式が凄く計算ずくなんですよね。だからモノクロ、だからステレオ、だからシネマスコープ。

 

しかし計算通りにはいかない部分があるのもまた面白いところですよね。

 

スポンサーリンク

 

新人「山崎努」が奇跡を起こす

『天獄と地獄』でいうと最後のシーンでそれを黒澤は描くつもりだったのに、予期せぬことが起こってしまうのです。

 

それは何かというと、山崎努さんです。
山崎努さんはそのころほとんど新人で主にテレビで活躍をしていた人です。

 

このシーンでは黒澤監督は演出指導は一切しなかったらしいんです。で、あそこで、頭を掻きむしりながら、金網を掴んで叫ぶってシーンがあって、それは完全に山崎さんのアドリブであったという。

 

で、この時は、顔がちゃんと映るようにライトをきつくしていて、金網を触ると火傷するようなぐらいになっていて、あれは黒澤さんの演出ではなかったという。

 

元々のシナリオでは、犯人の話を聞いた後でシャッターが落ちるんですけど、あのシャッターは、この二人は境遇は似ていたけれども、全く違う人間なんだ、相まみえない人間であるという意味で、天国と地獄にわけるという意味でシャッターを降ろしたという。

 

その後、仲代さんが外で待っていて、二人で話ながら、また会いますかね?って三船が言うと、仲代が「いや、刑事なんかと合わないほうがいいですよ」っていって終わっていくシーンがあったわけだけどそこを使わず、本編はシャッターが下りたシーンで終わっているんです。

 

それはなぜかというと、山崎さんのアドリブが余りにも凄かったから。あのコントロールフリークの黒澤さんが、エキストラのお婆ちゃんにまでダメ出しする黒澤さんが、自分がまったく予期していなかった演技を映画のラストに採用したという。

 

コントロールフリークが新人俳優のアドリブに負けた瞬間だったんですよ。これは凄いことなんですよ。完全に新人俳優なんですから。

 

黒澤の悪への考え方を変えさせた演技

これがなぜそんなに凄いことかというと、それまでも劇中での仲代達矢に代表される犯人への同情ゼロ的な演出がひっくり返されんですから。観客に対して犯人を徹底的に冷酷非道に描いて、犯人なんて死ねばいいんですよね!ってアピールしていたことが、最後の山崎努の演技で、そうじゃないんだ、彼にも苦しみがあるのか、と感じざるを得ない迫真の演技を見て映画は終了していくんですから。

 

黒澤さんがやろうとしてたテーマ自体を山崎さんのアドリブがひっくり返したんです。

 

これが黒澤さんの予期せぬものだったけれども、心の奥底では予期していたものでもあったんです。

 

なぜならば、なぜ暑い部屋で狭い部屋で苦しみながら、あの金持ちが苦しめばいいと思ったのか?

 

あの部分は黒澤が影響を受けたドストエフスキーの『罪と罰』の冒頭の引用なんです。

 

黒澤監督はずっとドストエフスキーをやろうとしていたんですよ。『罪と罰』のラスコイニコフは山崎努さん演じた犯人に原型であったことは確かなんですよ。
だから暑さのなかで苦しんでいる青年にしているんですよ。

 

この山崎さんの演技は後の黒澤作品にも影響を与えています。その後山崎さんは黒澤映画に出続けますし、その後の黒澤作品のダークサイド側の人間描写に変化をもたらしています。

 

明かに善悪きっちり、白黒分ける演出ではなくなってきていますよね。

 

 

この映画は前年に公開されたブレイク・エドワーズ監督の『追跡』という映画に非常に影響を受けています。犯人を途中まで見せない構成などは。

 

それと、この映画がものすごく影響を与えた映画があると、それは『新幹線大爆破』です。これは『天獄と地獄』では描かれなかった犯人側の気持ちを描いていますよね。
もの凄く真似していることころが多いです。
『新幹線大爆破』における犯人の行動や、警察の行動は明らかに、『天獄と地獄』に対するアンチテーゼになっています。だからちょっと比べて観てみるものいいかなと思います。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加   

 

U-NEXT で黒澤明監督「天国と地獄」を観る(31日間無料)

 

 

巨匠黒澤明を語り尽くす!共演者、スタッフ、批評家、様々な人が語る黒澤明論の関連ページ

黒澤明の師匠〇〇が語る黒澤明を面接したときの話!「絵だって映画だって同じです!」

 

黒澤明『羅生門』の金獅子賞立役者カメラマン○○が語る撮影秘話!

 

黒澤組を技術で支えたカメラマン斉藤孝雄インタビュー!「必ずどこかに○○がありました」

 

リリー・フランキーが愛してやまない黒澤明映画は、なんとあの作品だった…!?

 

黒澤明監督の居場所 おすぎエッセイ

 

東京五輪総合演出の野村萬斎は15才で黒澤明作品に出演していた!『乱』『蜘蛛巣城』と能・狂言との関係性について語る!

 

渋谷陽一が語る黒澤明 肯定性とヒューマニズム、そしてあの自殺未遂について斬り込む!

 

黒澤明についた助監督たちが語るクロサワ体験記がヤバい…

 

映画監督田中登が語る黒澤明 『用心棒』での学生助監督見習い

 

森崎東監督が黒澤明『野良犬』のリメイクを作りたくなかった衝撃の理由とは…?

 

黒澤明が持つエンターテイメント性と思想性について 世間一般の間違ったバカな見解とは?

 

『野良犬』『酔いどれ天使』『七人の侍』などに見る黒澤明の偉大なる〇〇とは!?

 

『トラ・トラ・トラ!』に見る敗者の黒澤明 『どですかでん』に見る悲劇の黒澤明を解説

 

『踊る大捜査線』にみる『椿三十郎』 たまには強引なクロサワ論で…

 

『用心棒』や『天国と地獄』に見る黒澤明の天才的な○○的感性について

 

『踊る大捜査線』の黒澤オマージュは『天国と地獄』だけではないんだぜ!

 

黒澤明の不可解? 黒澤明不思議論

 

評論家町山智浩氏が「七人の侍」を徹底解説!『七人の侍』に欠けているたった唯一の弱点とは!?

 

『天獄と地獄』のラストシーンで、黒澤明とて予期しなかった凄いことが起こった!? あの役者〇〇の怪演がエンディングを変えた!?

 

黒澤明の映画論とテクニックに関する記事一覧

黒澤明作品の真髄は脚本!橋本忍、小国英雄、菊島隆三という偉大なストーリーテラーとのクリエイティビィティ!

 

黒澤明の撮影術 パンフォーカスやマルチカムを世界中に流行らせたのは黒澤!

 

黒澤明作品の原案は〇〇が半数!「七人の侍」は「壊滅」という〇〇がヒントになった!

 

黒澤明「羅生門」は「〇〇〇〇アプローチ」として海外作品に強烈な影響を与えた!

 

「七人の侍」製作者・本木荘二郎の晩年が悲しすぎる…

 

宮崎駿が大絶賛!黒澤明のあの名作「〇〇〇」のファーストシーンの戦慄!

 

黒澤明監督『影武者』 勝新VS黒澤 どっちが悪い?主役交代劇の真相は〇〇だ!

 

黒澤明「野良犬」と「静かなる決闘」は兄弟作 そしてあの名作「〇〇〇〇〇」に繋がっていく!

 

『七人の侍』 俳優を追い込む黒澤明のドSっぷりがヤバすぎる…貴重すぎる撮影秘話の数々

 

『椿三十郎』映画史に残る有名なラストシーン 今じゃ考えられない取り直しが利かない緊迫の撮影現場!!

 

映画監督アンケート! 私が選ぶ黒澤明ベスト3!

 

なぜ『暴走機関車』は頓挫したのか? 黒澤明とハリウッドの距離

 

『悪い奴ほどよく眠る』『生きものの記録』にみる黒澤明の○○性!

 

黒澤明の壮絶な生い立ちや全作品紹介はこちら

師匠山本嘉次郎が語る黒澤明を面接したときの話!「絵だって映画だって同じです!」

黒澤明は画家を夢見ていたが、絵では食っていけないと感じていた。また兄丙午の死によって、長男のような責任も感じ始めていた。とにかく父母を安心させたいという一心で後の東宝にあたるP・C・L映画製作所の助監督公募の広告をみて応募する。その時の面接官が後の師匠となる山本嘉次郎であった。その山本嘉次郎が弟子の...

≫続きを読む

黒澤明『羅生門』の金獅子賞立役者カメラマン宮川一夫が語る撮影秘話!

※『Esquire』1990年9月号よりクロサワとミヤガワ はじめての仕事僕は、キャメラマンとしてスタートをしたときに稲垣さんにいろいろ教えてもらった関係で、稲垣さんと仕事をすることが一番多かったんです。稲垣さんが丁度『手を繋ぐ子達』というのを昭和23年に撮って、その後東宝へ行かれたんですね。それで...

≫続きを読む

黒澤組を支えたカメラマン斉藤孝雄インタビュー!「どこかに仕掛けがありました」

黒澤映画では『素晴らしき日曜日』から『まあだだよ』まで、約50年にわたって撮影に携わってきた斎藤孝雄氏。メインの撮影監督になるのが『椿三十郎』ではあるが、それまでもマルチカムの2台目の撮影はすべて斎藤氏による撮影であった。以下、インタビュー記事の抜粋である。黒澤の第一印象や撮影術について※河出書房新...

≫続きを読む

リリー・フランキー 愛すべき人に薦めたい作品は黒澤明監督「どですかでん」

『どですかでん』が黒澤作品のベスト1と言っている人はなかなかいません。このサイトの管理人である私は『どですかでん』がベストでありますが、共感し合える人も少なく寂しい思いをしています。なのでリリー・フランキー氏が『どですかでん』ファンであると聞いて嬉しくおもいました。色々と好きな理由はあるのですが、私...

≫続きを読む

おすぎが語る黒澤明日本人についてがけっこう深い!?

映画を撮りたくても撮れなかった50代60代私自身、黒澤監督のマネージャーやスクリプターなどのお仕事をなさっていた野上照代さんと親しいものですから、その関係で監督とお話もさせていただいたし、『乱』の撮影現場も仕事がてら陣中見舞いに寄らせていただいたり。監督かちょっと谷の方に下りていったのを「迎えがてら...

≫続きを読む

野村萬斎が語る黒澤明と『乱』『蜘蛛巣城』。 能・狂言との関係性について

伝統芸能の役者でありつつも、常に新しいアプローチを模索し続ける狂言師・野村萬斎。伊藤英明とのコンビで大ヒットを記録した『陰陽師』や日本アカデミー賞10部門受賞した『のぼうの城』など、ヒットを放てる数少ない伝統芸能人。2020年開催の東京オリンピックでは総合演出を任され、グローバルなフィールドでの活躍...

≫続きを読む

ロックジャーナリスト渋谷陽一が巨匠黒澤明を語る!自殺未遂について等

日本におけるロックジャーナリストの第一人者である渋谷陽一による黒澤明回想記である。『ロッキング・オン』以外にも『Cut』などで俳優や映画監督などのサブカルチャー全般を釣り扱っており、雑誌の編集やインタビューなど、高く評価されている。渋谷陽一が語る黒澤明黒澤明は積極的に触れなかった映画はそれこそ小学校...

≫続きを読む

黒澤明についた助監督たちが語る クロサワ体験記

映画の現場で一番過酷なポジションとはいったいどの担当の人間だろうか?答えは一目瞭然、助監督である。テレビでいうアシスタントディレクター、いわゆるADが映画でいう助監督である。監督の現場の怒号は、役者やその他の技術スタッフなどにはほどんど向けられない。基本的には監督が怒る相手は演出部の部下である助監督...

≫続きを読む

映画監督田中登が語る黒澤明 『用心棒』での学生助監督見習い

主に日活ロマンポルノ作品を監督し、『夜汽車の女』『?式場メス市場』『人妻集団暴行拉致事件』『発禁本「美人乱舞」より責める』などの数々の名作を残した映画監督の故田中登氏が、学生時代に、『用心棒』の現場スタッフのアルバイトをしていたという。その時の様子を語ったのが以下である。田中登 学生助監督見習い記ぼ...

≫続きを読む

黒澤明『野良犬』のリメイクを作りたくなかった理由 森崎東監督

昭和48年の松竹で製作した『野良犬』が25年ぶりにやっとビデオ化された。自作の中で『野良犬』だけがビデオ化されていない理由を、原作者である黒澤監督と菊島隆三氏の許可がないからだと思ってきたが、実はそうではなかったらしい。正直言って、私は会社企画であるこのリメイクを断りたかった。私は自分の監督昇進一作...

≫続きを読む

黒澤明が持つエンターテイメント性と思想性について 世間一般の間違った見解

映画批評なんてやっぱりくだらないものだと思う。テレビのコメンテーターと同じように、舞台に立つ恐怖やプレッシャーも知らずに、一丁前のことらしきことを言って自分に酔うのが映画批評。ロックのジャーナリズムもそんな感じ。今回紹介する高橋実という批評家?もいろいろと言っているが、結局、映画は観て個人か感じたも...

≫続きを読む

『野良犬』『酔いどれ天使』『七人の侍』などに見る黒澤明の偉大なる先取り!

偉大なる黒澤明以下は映画評論家の高橋実氏のコラムである。映画評論ってやっぱり、説得力がないな〜とつくづく思うのである。やはり、映画は観るものなのでしょう(このサイトの存在意義は?笑)------------------------------------------------日本を代表する映画監督...

≫続きを読む

『トラ・トラ・トラ!』に見る敗者の黒澤明 『どですかでん』に見る悲劇の黒澤明

映画批評なんてやっぱりくだらないものだと思う。テレビのコメンテーターと同じように、舞台に立つ恐怖やプレッシャーも知らずに、一丁前のことらしきことを言って自分に酔うのが映画批評。ロックのジャーナリズムもそんな感じ。今回紹介する高橋実という批評家?もいろいろと言っているが、結局、映画は観て個人か感じたも...

≫続きを読む

『踊る大捜査線』にみる『椿三十郎』 たまには強引なクロサワ論で…

『椿三十郎』と『踊る大捜査線』しかししつこく書けば、例えば『椿三十郎』の頃は実に、鋭敏な同時代感覚を持っていた。その証拠に橋本治氏の『完本チャンバラ時代劇講座』を開いてみる。東宝のサラリーマン映画に出てくる”現代人”を大胆に器用し、黒澤作品にしては珍しく明らさまに二番煎じで明らさまに娯楽映画である『...

≫続きを読む

『用心棒』や『天国と地獄』に見る黒澤明の空間的感性について

今回の批評は、黒澤明が映画の中で描き出した「空間」について。なかなか凄いことを言っている感がある文章ですが、映画批評家などの文章は非常に分かりにくい。難しくこねくり回して、自分の語彙力や文章力をこれでもかと見せつけている感がよく目につく。映画はやはり、語るものではないですね。笑黒澤明が映画の中で描き...

≫続きを読む

『踊る大捜査線』の黒澤オマージュは『天国と地獄』だけではない!

映画批評 轟由起夫※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋噂は公開前から耳にしていた。何やら大胆不敵にも「クロサワを引用している」というではないか。ヒントはずばり「誘拐」だ。となると例のシーンか。それを確かめようと初日劇場へと向かった。満員だった。客席は異様な熱気をはらんでいた...

≫続きを読む

黒澤明の不可解さ 黒澤不思議論

「国際性」と「国民性」が同居黒澤明は不思議な存在である。それは日本においてはトーキー以降の世代で唯一「国際性」と「国民性」が同時に成立する映画作家だからである。例えば、戦後の同時期に活躍したほぼ同世代の作家たち、『二十四の瞳』の木下恵介、『青い山脈』の今井正、『君の名は』の大庭秀雄等は、黒澤と同様に...

≫続きを読む

評論家町山智浩氏が「七人の侍」を徹底解説!『七人の侍』に欠けている唯一の弱点とj...

映画評論家の町山智浩氏が日本映画の至宝『七人の侍』について語っている内容をまとめてみました。町山さんに『七人の侍』に対する見解の深さもさることながら、対談相手の春日太一氏の情報量が凄いです。『七人の侍』の3時間に及ぶ長さは最初から意図されたものだったのか?春日 この映画は製作日数は271日で、総製作...

≫続きを読む

『天獄と地獄』のラストシーンで黒澤明が予期しなかった凄いことが起こった!?

映画評論家で黒澤作品についても詳しい町山智浩氏の『天獄と地獄』の解説をご紹介します。町山氏は、この映画『天獄と地獄』をはじめて観たとき、「え?これでいいの?」と思ってしまったらしい。中学生ながら、これはちょっとダメなんじゃないのという違和感があったという。その違和感や、黒澤監督自身も予期しなかったラ...

≫続きを読む