映画レビュー

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「サンセット大通り」はまさに独り孤独で見る事を強くお勧めしたい数少ない映画

映画を見るときは誰かと一緒に見るとその映画をより楽しめることだろう。
一緒に見ればその映画の感動や興奮を共有できるし、鑑賞後にはあーでもないこーでもないと意見を交換できる。
なによりも誰々と観た映画だという思い出が一つの映画の記憶に付加される。

 

しかしこの世界に存在する数多くの映画には決してそうとも言えない映画がいくつか存在する。
今回書かせてもらう「サンセット大通り」はまさに独り孤独で見る事を強くお勧めしたい数少ない映画である。
一人で見ることによってこの映画の真の魅力やメッセージを感じることができ、一人で観ることで、その魅力やメッセージにある種襲われることで、初めてこの映画を「観た」と感じられるのがこの「サンセット大通り」なのだ

 

「サンセット大通り」は1950年のアメリカ映画で、コメディの名手と評価される名称ビリー・ワイルダーの監督作品である。
出演にはグロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、セシル・B・デミルなどが名を連ねている。
後述するがグロリア・スワンソン、エリッヒ・フォン・シュトロハイムやセシル・B・デミル、彼らが実際の映画界でどんな人物なのか、そして彼らがこの映画でどんな映画を演じたのかを少しでも調べた後でこの映画を見ると、この映画が単なる映画内で収まるドラマを描いているものではないという事が鮮明に見えてくるはずだ。

 

この映画は一般的にはある犯罪の経緯とそこで交わる人間同士の関係性を描く「フィルム・ノワール」というジャンルとしてカテゴライズされることが多い。
フィルム・ノワールである場合は往往にして映画のタッチは退廃的で、暗いものが多い。
この映画も御多分に洩れずそのような要素がとても多い。
だが、ちょっとだけここで飛躍した見方をするとこの映画はホラー映画として、そして時にはコメディ映画としても観られるのではないかと思うのだ。
まぁ、ホラーは分かる。退廃的で暗い、映画のタッチなのだからそう縁遠くもないだろう。
ではなぜ退廃的で暗い部分の多いこの映画がコメディとも観られるか、というとそれはこの映画全体を通して観た時に浮かび上がる大きな「皮肉」の構造がどうしてもそう感じさせるのだ。

 

ネタバレしない程度に一つの大きな皮肉の例をとってみよう。
この映画の始まりはある男(ジョー(演:ウィリアム・ホールデン))が豪邸のプールでぷかぷかと浮いている場面から始まる。
しかし実は男は泳いでいるのではない、死んでいるのだ。
そしてそこにある男のナレーションが入る。
「今このプールに浮かんでいるのは僕だ。僕は売れない脚本家だった。
一発当ててプール付きの豪邸に住むのを夢見ていた。しかし僕は途中で死んでしまった。
死んでしまったけれど今こうして僕は憧れの豪邸のプールに浮かんでいる。なんとも皮肉だけれど、僕の夢は叶った。」
そう、このナレーションの主はこのプールにぷかぷかと浮かぶ死体の男なのだ。
そんな目の前で死んでいる男の独白からこの映画は始まり、この男がいかにしてこのような運命を辿ったかをこの男のナレーションで辿っていくのだ。
誰がどう観ても、いや描き方によってはとてつもなく悲しく描けるお話だが、そこをあえてアイロニカルに語ることによって、この映画が悲しい物語にも関わらずどうしようもなくクスリと笑えてしまうコメディ映画のようなおかしさを内包しているのだ。
こうして対位的に悲しみを皮肉で包むことで、単なる悲しみや情けを請わない、むしろ悲しみと笑いを同包した、言葉では言い表せない感情を観ている人に与えることになるのだ。
そして同時に脚本家を目指した彼の運命こそが一番面白い物語になっていた、という映画の構造自体が大きな皮肉にもなっている。

 

そしてこの男の他の主要人物であるサイレント映画時代のスター女優ノーマ(演:グロリア・スワンソン)や彼女の執事であるマックス(演:エリッヒ・フォン・シュトロハイム)。彼らにも皮肉な運命が待ち構えている。
ノーマは過去の栄光が手放せず、サイレント映画時代から時間が止まってしまった大女優。
彼女はいつかまたスクリーンにカムバックし、あの眩しいスポットライトを浴びる事を夢見ていた。
マックスはノーマの執事ながら、実は「サイレント映画の三代巨匠」と言われた人物。
彼はノーマを再びスクリーンにカムバックさせる事を夢見ている。
映画のクライマックス、彼らのその夢が叶うのか、それとも無残にも散るのか、結末は是非とも映画を観て確かめてもらいたい。
一つだけ言いたいのはこの結末も皮肉たっぷりに描かれているということだ。
そして同時に悲しくも、恐ろしくもあり、そしてやっぱりおかしみもあってクスリと笑わずにはいられない結末なのだ。

 

そしてもう一つの要素がホラー的な要素だ。
ここに冒頭の「この映画を一人でみるべき」という前振りの答えがある。
この映画の主題の一つに「孤独」というものがあるだろう。
先述の通りサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンドは過去の栄光が忘れられない。
眩しく光るスポットライト、慌ただしく動くスタッフ、自分を捉えるカメラ。
「ライツ、カメラ、アクション!!」その声からほとばしる緊張感が彼女を離さない。
しかしハリウッドのシステムが彼女を映画から遠ざけていく。
サイレントからトーキーが主流になるように、モノクロからカラーになるように、映画は少しずつ変化する。
演者も監督も技術者もその変化に対応できなければあっという間に過去の人になるのが映画業界だ。
しかし彼女にはその変化に対応できなかった。
そして彼女は忘れられ、誰も彼女に寄り付かなくなり、彼女は一人になった。
一番怖いのは彼女がその変化に気付いていないばかりか、過去への執着によって自分をなんとか保っているということだ。
彼女の豪邸の中には過去の栄光の中心にる自分の写真が所狭しと並べられている。
どこを見ても「ノーマ、ノーマ、ノーマ。」
金のために彼女の愛人でになった売れない脚本家のジョーは、彼女の一日の日課である映画鑑賞に付き合わされる。
しかし彼女が見るのは決まって自分が主演のサイレント映画だ。
しかもただ観るだけではない、あたかもその映画に魅入ってしまった観客のようにうっとりとした眼差しで、ひたすらにスクリーンの中に映る自分を見つめているのだ。
このあたりがこの映画の恐ろしい場面だ。
彼女は失われた自分自身を追い求め、時代の流れとは常に逆へ逆へと向かっていく。
その妄信的な姿は恐ろしくもあり、痛々しくもある。
まるで痴呆の始まった老人のように、彼女は未だに失われた時代を彷徨い続けているのだ。
彼女がそれほどまでに過去にこだわるのは彼女の孤独が端を発している。
孤独を埋めるように自分の写真で大豪邸を埋め尽くし、孤独という現実から目を背けるために彼女は自分の映画の中の自分に魅入っているのだ。
なんとか孤独の隙間を埋めるために、彼女は今を捨てて過去に生きる。過去には輝く自分がいて、共に映画を作る仲間がいたからだ。
こんなノーマを見ていると、孤独は本当に恐ろしいものだなと思う。
ノーマには悪いが、こんな風にだけはなりたくないと思ってしまうのだ。
この映画を見ていると、いつかノーマのように孤独になってしまったらどうしようと考えられずにはいられない。
自分の楽しかったこと、嬉しかったこと、弱い部分や誇りに思いたい気持ちを、誰にも伝えられなかったらどんなに恐ろしいだろうと、どうしてもそんな不安が頭をよぎり、孤独の恐ろしさに包まれてしまうのだ。

 

だからこそこの映画は独りで観るのがおすすめなのだ、というより独りで観ないといけない。
そして孤独にブルブルと震えてこそ、この映画の醍醐味がたっぷりと味わえるだろう。
もちろん十分に孤独を味わったら、大切な人や、気のおけない友達に連絡しよう。
あなたが独りじゃないことがどれだけ幸せなことかがきっと分かるはずだ。

 

「サンセット大通り」は一見暗い、どんよりした映画に見られがちだ。
書いてきたようにたくさんの感情がないまぜになって一挙に投げかけられるので、もしかするとストーリーを追うだけで終わってしまうかもしれない。

 

そんな時は独り、部屋を真っ暗にして、スマホの電源を落としてこの映画に没入してほしい。
そうすればきっとこの映画の奥にある、悲しみや、怖さや、クスリと笑える可笑しさがぼんやりと浮き上がってくるはずだ。

 

ちなみにこの映画、前述のようにキャスティングにも大きな皮肉が込められている。
まずはノーマ・デズモンドを演じたグロリア・スワンソン。
彼女は実際にサイレント映画時代のスター俳優で、実際に映画に音声がついてからはあまり活躍の場が無かった女優なのだ。
そしてマックスを演じたエリッヒ・フォン・シュトロハイム。彼も実際には「サイレント映画の三代巨匠」と言われた人物で、そして実際に上記のグロリア・スワンソンを主演にした映画を成功させた。しかし彼の莫大な資金をかける無駄の多い制作スタイルが次第に受け付けられなくなり仕事を失っていく。
加えて、劇中のデミルという映画監督は実在するセシル・B・デミルのことだ。演じたのもそのまんまセシル・B・デミル。本人役での出演というわけだ。
彼は映画の通りサイレント映画から超大作物(代表作に「十戒」など)に方向転換し成功を納めた。
つまりはこの映画、出演したキャストはほぼほぼ自分の事を描いたようなキャラクターを演じているという事なのだ。
不倫で干された元人気俳優が、不倫モノの作品でカムバックする。
そんな感じだろう。

 

ぜひぜひここら辺も頭に入れて観ていただくと、「サンセット大通り」をさらに楽しめることと思う。

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