黒澤明×三船敏郎「天国と地獄」は総合力の天才であることを証明する映画!

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天国と地獄

黒澤明「天国と地獄」ここが凄い!ポイント

サスペンス映画でありながら何度見ても面白い!
徹底した現場検証と綿密な構成
黒澤は総合力の天才!
誘拐に関する刑法改正のきっかけになった映画
アマゾンのレビューが凄い!

 

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娯楽映画かつヒューマンドラマ

 

エド・マクベインの小説「キングの身代金」を下敷きにしている。
が実際はほんの一部を借りただけですと黒澤が語るように、前半は誘拐された少年を救出するまでのヒューマンドラマ、後半は犯人追跡のサスペンスドラマというようにそれぞれ趣の違った2部構成になっている。

 

当時の誘拐罪に対する刑の軽さに対する批判と、徹底的に細部にこだわった推理映画を作りたい、という思いから製作され、1964年の刑法一部改正(身代金目的の略奪<無期または3年以上の懲役>)のきっかけになったという。

 

シナリオは小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明のいつものチームで書かれ、綿密な構成と独特の見せ場で見るものをぐいぐい物語に引き込むことに成功している。

 

菊島によると、「靴職人の下積みからたたき上げ人生を闘い抜いてきた重役のキングという男のキャラクターが三船敏郎のイメージにぴったりだ」ということから、取り上げたという。

 

「天国と地獄」の当時の評価は文句なしの傑作というものではなかったらしいが、評論家の芝山幹郎氏はこう評している。

 

何度見ても面白い。見るだびに新しい発見がある。そしていつ見ても同じ場面でため息がでる。黒澤明の後期を代表する傑作「天国と地獄」は、そんな映画だ」
「映画にのみ可能な空間のドラマに胸を躍らせ、背筋をぞくりとさせる」※1

 

また映画監督の熊井啓氏はこう述べている。

 

「天国と地獄」では、だいぶ悪口をいわれたね。警部の扱いがおかしいと。しかしこれは、まったく見事なリアリズムだと思う。それを、黒澤が官僚的な国家権力に癒着はじめた証拠だなどと、若手の批評家が言ったけれど、僕はよくぞ書いたと思う。警察というものは、そういうものだ。警察が自分で自分の交番を爆破することがあるんだから」※1

 

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アマゾンのレビューが凄い

 

アマゾンのレビューを見ていると、黒澤作品は軒並みどの作品も高評価なのだが、中でもこの「天国と地獄」の★5つの数がえげつない。50人ほどのレビューワー中、47人が★5つを出している。

 

この映画はカーチェイスやドンパチなんてない刑事物。前半はほぼ部屋の中でのシーン。よって画面的な面白さもなし。

 

でも、このレビュー結果が、単純に誰が見ても楽しめるエンターテイメント作品であるということを、証明している。

 

事件によって、いままで築きあげてきたものをすべて奪われた主人公が放ったセリフ、

 

「俺はこれからがいよいよ俺なんだ」

 

これが、かっこ良すぎます。三船敏郎ここにありです。

 

身代金の受け渡しのシーンは超有名ですが、このシーンは実際にあった手口を映像化したものと勘違いするほど、リアリティが跳びぬけています。

 

映画はあくまでエンターテイメントなんで、「んなアホな!」と突っ込みたくなることがあって当たり前なんですが、黒澤作品でそれを感じることはないんですよね。しらけさせないような細部にまでこだわったキャラ設定と状況設定。そして回収可能な伏線の貼り方をしています。

 

黒澤映画の醍醐味は、人情に訴えかけるヒューマニズムであると言われています。でも黒澤明が「世界のクロサワ」である理由は、映画を構成する全ての要素を妥協せずに、徹底して掘り下げているところではないでしょうか。

 

テーゼとアンチテーゼ
脚本
演出
リアリティの追求
役者
お金のかけ方
音楽や効果音
編集

 

これらを妥協せずに、自分にも他者にも求めて作品を創っていたところでしょう。総合力の天才ですね。それがはっきりとわかる作品がこの「天国と地獄」ではないでしょうか。

 

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民家一軒を壊したは本当?!

特急こだまからのカットで、犯人と子供を権藤が目視で確認するカットについて、手前に民家が写り込んでしまうため、お願いして民家を取り払ったという都市伝説は本当か?

 

真相は野上照代さんの著書の中に記されていた。

土手の犯人が見えるところで、キャメラの手前に民家の2階が画面に入り、犯人と子供を言えにくくしているではないか。黒澤さんも「これじゃまずいね。根津君!」と製作担当を呼び「どうする?どうする?」と言っている。

 

ここからは根津さんに直接聞いた話である。

 

「どうする?どうする?ったって、撮影は明後日なんだよ。とにかく話してみます、ってことで大道具さんつれてその家へ行ったよ」

 

その家は木造の2階家で邪魔をしていたのは子供の勉強部屋だった。ご主人は入院中で母子2人だけだという。根津さんは奥さんに「撮影は1日だけです。その間、2階を取り壊し終わったらすぐ元通りにしますから!」と強引に頼み込み承諾してもらった。撮影当日はブルーのシートで隠されていた。

 

根津さんは撮影が終了するやいなや、直ちに2階を復元したが、その時はウチの大道具さんではなく、その家を建てた本当の大工さんうを頼んで復元してもらったそうだ。

 

この事件は大げさに伝わり、黒澤は撮影に邪魔だからといって家を一軒壊したそうだ、と言われてきたが事実ではない。

 

※野上照代著書 「もう一度天気待ち 監督・黒澤明とともに」

 

『天国と地獄』へのオマージュ

映画批評 轟由起夫
※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋 

 

青島刑事がそこで目撃したものと云えば、もちろん煙突であり、焼却炉から立ち上っていく赤色の煙だ。

 

確認するまでもないだろう。黒澤明がモノクロ画面にわざわざ部分着色してみせた『天国と地獄』のトリッキーな名場面。

 

特殊薬の仕込まれたカバンを誘拐犯が焼却した場合、赤色の煙が上空を染め上げるというあのシークエンスが、一応ディテールは変えられてはいるものの、ほぼ丸ごと引用されていたのだ。

 

オマージュか?パロディか?はたまた単なる戯れか?ともあれ製作サイドより事前に了解を求められ、引用を許諾した黒澤明は、これを見ることなく撮影中に亡くなった。

 

因縁めいたエピソードに、本家ソックリのゴミ置き場ならびに焼却炉をしつらえた美術プロデューサーの梅田正則氏はこんな言葉を残している。

 

「あのゴミ置き場は、小屋のまわりのイメージを『どですかでん』でやって、小屋の中にあるマンガ本の山が『椿三十郎』の馬小屋のワラの山のつもりで作ったんですよ。建てたのも黒澤組の大道具の人だし、中身は『天国と地獄』でしょ。それも同じ東宝の撮影所で。嬉しかったんだけどね。本当に見て欲しかった。先生に。」

 

大の黒澤ファンであった梅田氏の言葉の繰り返しになるが、黒澤にはこの映画は観て欲しかった。
ウケるところではドカーンと爆笑し、ラストにはしっかり涙ぐむノリのいい満員の観客の中で本当に見て欲しかった。

 

そうして引用シーンのみならず、TVシリーズから生まれ、おそらく1998年度の邦画最高のヒットとなるであろう『踊る大捜査線 THE MOVIE』の感想を、本人の口からぜひ聞いてみたかった。

 

なぜならそこには、黒澤を頂点とするかつての「映画館全盛時代の観客」と、自分も含めた「今日の観客」とが少なからず共有しているだろうエンターテイメント密度というべきものを感じ得たからなのだ。

 

黒澤の悪の描き方について

黒澤明の悪の描き方は極端と言われている。
徹底的に悪に対する情をそぎ落して、悪党共は生きるに値しないという正義感を貫いている。

 

これに関して、評論家の町山智浩氏が語ったのを紹介します。

この映画で一番おかしいのが、仲代達也が、誘拐で逮捕されても刑期が短いじゃないかと。生ぬるい、犯人を泳がせよう。これは愕然としましたよね。

 

それあり?!って。でひとり死ななくていい人が死ぬんですよ。これあとでバレたら大変ですよ、仲代。これは完全に捜査のやり過ぎですよ。
どう考えてもおかしいんですけど、これは黒澤さん自身の一種の作風に近い所なんですよ。

 

まあ、『用心棒』なんか見るとわかるんですが、ヤクザあれ皆殺しですから。悪いやつは全部死ね!っていう世界ですから。

 

あと『野良犬』って映画がありますよね。あれは貧しさの中で犯罪に手を染めていってしまう犯人がいるんですが、彼も人生色々あって犯罪に手を染めていってしまうんだってことは一切言わないんですよ。

 

やつは野良犬だって。切り捨てる。そして一番有名なのは『七人の侍』。野武士たちもそれぞれ大変だったんだろうということは一切描かない。ただの悪の集団、パーソナルな部分を一切描写しないという。

 

犯罪者や悪にたいする同情が一切ない。すごい厳しいんですよ。死ねばいいって言っちゃてるんですよ。

 

これを観たときに僕はやっぱりびっくりしちゃったんですけど、当時かなりこれは批判されたみたいですね。

 

具体的には佐藤忠雄さんが、これは正義感がおかしいだろうと。非常に浅い正義感ではないかと。

 

『七人の侍』の頃から、悪に対する共感がゼロってことは批判されてきてたんですよ。それがこの映画では決定的で、ある意味ファシスト的であると。

 

でこれで誘拐犯の刑が重くなったのは事実なんですけど、この映画をまったくマネして、誘拐犯が「よしのぶちゃん事件」ってのを起こして、実際に犯人が子供を殺していると。

 

でその部分ってのは、黒澤監督の言いたいところなんですよね。
『野良犬』で、犯人の境遇と正義の側、刑事である三船敏郎の境遇が似ていると描かれていて、2人とも復員兵で苦労したんだが、一人は刑事になり、一人は犯罪者になったと。それは根性の有無の違いなんだとして、負けてしまった人に対して、徹底的に冷たい。

 

で、この映画『天国と地獄』の中では、三船敏郎演じる主人公は、実は貧しかったんだと、でも一生懸命頑張って偉くなったんだと。そういう設定にしているんです。言い訳が出来ないようにするために。

 

一人は犯罪を犯してダークサイドに堕ちた人、一人は成功者になって社会的に認められる存在にななった人。

 

二人を分けた明暗はなんだったのかということを黒澤は『野良犬』でも『天獄と地獄』でも『七人の侍』でも描きたかったんではないでしょうか。

 

かんたんなあらすじ

 

黒澤明,天国と地獄

 

製靴企業「ナショナルシューズ」の常務・権藤金吾の元に「子供をさらった」という電話が入る。しかしその後、すぐに息子が現れる。
いたずら電話と思っていると、社用者の運転手である青木の息子がいないことを知る。

 

2人で遊んでいた常務の子供と、運転手の子供を、犯人は間違えて誘拐していた。

 

犯人はそれにも気づくが、そのまま身代金を要求。

 

警察が駆けつけ救出作戦が練られる中、妻は身代金の支払いを権藤に要求するが、権藤にはその要求を簡単には飲めない、人生を賭けた事情があった…

 

製作:田中友幸 菊島隆三
脚本:小国英雄 菊島隆三 久板栄二郎 黒澤明
原案:エド・マクベイン「キングの身代金」
撮影:中井朝一 斉藤孝雄
美術:村木与四郎
照明:森弘光
音楽:佐藤勝
助監督:森谷司郎 出目昌伸 松江陽一
出演:三船敏郎 香川京子 仲代達矢 山崎努 石山健二郎 三橋達也

ウィキペディア フリー百科事典「黒澤明」より引用
河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より引用
脚注
※1 文藝春秋発行 小林信彦著書 「黒澤明という時代」より抜粋
※2 やのまん発行 塩澤幸登著書 「黒澤明 大好き!」より抜粋
※3 毎日新聞社発行 堀川弘通著書 「評伝 黒澤明」より抜粋
※4 河出書房新社発行 「黒澤明 生誕100年総特集」より抜粋
※5 文藝春秋発行 田草川弘著書 「黒澤明VSハリウッド トラ・トラ・トラ!その謎のすべて」より抜粋

 

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