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「野良犬」は刑事ドラマの定番設定
黒澤明・三船敏郎時代に成功した作品の脚本は、プロット、キャラ設定ともに相当練り上げられている。
とくに「野良犬」は若手刑事とベテラン刑事がコンビで犯人を追うという定番の設定を編み出した傑作だ。
ドン・シーゲル監督「ダーティハリー」やリチャード・ドナー監督「リーサル・ウェポン」、デヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」などのハリウッド映画も、この野良犬型脚本を踏襲していると言われている。
「野良犬」は黒澤が好きなフランスの推理作家ジョルジョ・シムノンばりの映画を撮ろう、という狙いでスタートした。
菊島隆三は面白いネタを求めて捜査一課に通い詰めるがネタはなく焦っていたという。
「あたり前は映画にならない」というポイントからなかなか抜け出せないでいたある日、「警官も拳銃をなくすことがたまにある」という情報が入ってくる。
菊島は「それは映画になる!」と飛びついた。
脚本で一番大事な枷の効用をよく知っている、というべきであろう。
主人公は自分の責任において犯人を追うわけで、単なる犯罪捜査ではあに重圧が主人公におしかかってくる。
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「静かなる決闘」と「野良犬」の関係性
黒澤は自伝の中で、「野良犬」について前作の「静かなる決闘」を引き合いにだして次の様に述べている。
あの「静かなる決闘」で私が一番言いたかったことは、大方の人にはわかってもらえなかったようだが、少数には理解頂いた。
私はそれをもっとよく分かってもらうために「野良犬」を創った。
私は「野良犬」で「静かなる決闘」の問題にもう一度取り組み、今度こそこの問題を誰の目にもわかるように作品に収めたかった。」
黒澤明の頭の中では、「野良犬」と「静かなる決闘」は同じことを言いたかった兄弟作品であるのかもしれない。
理性と欲望、善と悪、社会と個人という相反するものを、「静かなる決闘」では一人で、「野良犬」では対照的な2人の登場人物を使って表現させている。
後の傑作「天国と地獄」もこの対照的な2人の登場人物を用いて作られている。
※黒澤明の作劇術 古山敏幸 フィルムアート社 より引用
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