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ラショーモン・アプローチ
黒澤明監督の「羅生門」は公開時、分かりにくい内容であったため、興行収入も評価もからしきダメな作品であった。
しかし、ヴェネツィア国際映画祭でグランプリを獲得すると、日本国内では評価が激変。
大映の重役などは始めは「わけが分からない」と酷評だったのに、グランプリ受賞後はコロっと態度と一変したといわれている。
映画自体のテーマや言いたいことは分かるけれども、日本映画市場でこの難解な作品を創ってしまったことが「わけが分からない」ということだったのでしょう。
採算がとれるはずがない映画をなぜ創ったのか?という。
それぐらい、その頃の邦画と洋画の差ははっきりしていたという。
しかし黒澤は日本人の観客の感性に合わせることより、作品のクオリティを突き詰めることを疑いもなく実行したというだけかもしれません。
物を創る人間の純粋な欲求と、あと、やはり海外作品に負けたくないという負けず嫌いな面も合わさって、歴史的快挙につながったのでしょう。
日本映画の黄金時代の幕開けとなる作品が「羅生門」だったわけです。
この映画が海外で受けた理由は、1つの事件を視点を変えて繰り返すという、当時のアイデアにしてみると斬新な映画であった。
このアイデアを使った脚本が海外で真似されだし、後に「ラショーモン・アプローチ」という映画用語が出来た。
64年のマーティン・リット監督、ポール・ニューマン主演の「暴行」では正式リメイク。
ベルナルド・ベルドリッチ監督も「殺し」、
チャン・イーモウ監督「HERO」、
メグ・ライアン、デンゼル・ワシントン出演の「戦果の勇気」
などは、ラショーモン・アプローチの作品で、あとグウィネス・パルトロー主演「スライディング・ドア」のような「もしも系」の作品も、ラショーモン・アプローチの影響化であると言えるでしょう。
サスペンス映画のクライマックスといえば、崖。
崖で犯人を追い詰めるという一つの様式美の原点が松本清張原作、野村芳太郎監督の「ゼロの焦点」。
この作品もラショーモン・アプローチの影響を受けていると思います。
野村監督は黒澤作品で助監督をやってますからね。
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