コメディーの名手ビリー・ワイルダー監督「お熱いのがお好き」

スポンサーリンク

笑いと愛

笑いのセンスというのは今も昔も変わらないのだろうか?
時々そんなことを考える時がある。
というのも、昔テレビで往年のコント番組が再放送かなんかで流れていた時、両親は腹を抱えて笑っていたけれど自分には全く面白さがわからなかった。
ベタな笑いばかりだし、笑いを狙ったひょうきんな顔は笑いを通り越してなんだか腹が立った程だ。
会社なんかで年配の人が言う冗談や言い回しなんかもなんだか古臭くて笑えなかった事がないだろうか。
かくして笑いのセンスは時が進むにつれて変わり続けるのだという考えを持つようになった。

 

そんな考えのものだから昔のコメディ映画を見てもあまり笑えることがなかった。
ここ笑うところですよという時にこれみよがしに出るひょうきん顔、はい笑って下さいという具合に流れるBGMや効果音にこちらの?はますます硬くなるばかりだ。

 

しかし、時に人を笑わせるのは普遍的な要素があるのでは…と感じさせてくれる映画ももちろんある。
コメディーの名手ビリー・ワイルダー監督の「お熱いのがお好き」はまさにそう感じさせてくれる一本だと思っている。
全く時代が違っても、どんなに月日が経っても硬くなった?を緩くさせてくれるコメディというのは存在するものだ。

 

「お熱いのがお好き」は1959年のアメリカ映画。
監督は前述の通りコメディーの名手ビリー・ワイルダー。
出演はマリリン・モンロー、トニー・カーティス、ジャック・レモン。

 

禁酒法時代のマフィア抗争の事件現場を目撃してしまったサックス奏者のジョー(演:トニー・カーティス)とベース奏者のジェリー(演:ジャック・レモン)はマフィアから追われることになる。
彼らはなんとか逃げようとあるガールズバンドの避暑地興行に女装してまぎれ込む事になる。
ジョーはジョセフィーンという女サックス奏者、ジュリーはダフネというベース奏者になりすましガールズバンドに入り、なんとかマフィアから身を隠すことに成功する。
しかしそこで会ったボーカルのシュガー(演:マリリン・モンロー)に二人は一目惚れしてしまう。そして事態はどんどんとあらぬ方向に進んでいく。

 

この映画、まずおかしいのは主人公のジョーとジェリーが男の格好で出てくるのは冒頭のわずか15分程のみ。その後二人は常に女装姿のおかまとしてスクリーンで暴れまわることになる。
「俳優は顔が命」とはもはや誰もが根底に感じていることだが、この映画ではそんな顔が生きるシーンはほんの僅かなのだ。鑑賞してメタな視線でこの映画を思い返すとそこに笑えてくる。
旬な俳優を使用し、その旬な部分をごっそり抜き取って笑いに変えてしまっているのだ。
それでけあって本来男前を売るはずの俳優二人の女装演技はなかなかに面白い。
終始声を上ずらせ、可憐な女性を演じるために手を顔横まで上げプリプリと腰を揺らして歩く。そのくせふとした瞬間に男ならではの機敏な動きや、力強さが垣間見えてしまうのも笑える。
バラエティ番組や映画などでのあからさまな”おかま”描写はきっとこの映画が元ネタになっていると言ってもいいだろう。

 

もちろんこの映画にはそこらへんにあるドタバタコメディと大きく一線を画す要素が散りばめられてもいる。人を笑わせるテクニックや知恵がきっと何百もあるのだろうと思う。
でもそんな細かいテクニックより何よりも、まず二人の男が真面目に女装して、真面目に恋をして、真面目にピンチを乗り越えて、でもやっぱり真面目に女装してる。
そんな、真剣なことやってるのに根本がどう考えてもおかしいというのがこの作品全体を覆う面白さなのは間違いないだろう。
設定からしてどんなことをしても笑える構造になってしまっているのだ。
ある意味ではずるい仕掛けな気もするが、名作だからといって肩肘張らずに見て良いんだよという何とも優しい、器のでかさがこの映画から感じられる。
最も名作というのははできた瞬間から名作なのではなく、できた瞬間にはそこらへんにある取り立てて特徴もない並の映画と並列な存在なのだ。
そこから設定の面白さ、特異さ、俳優の演技、話運びのうまさ、普遍的なテーマなどが嫌でも残り続けて名作となっている。
この「お熱いのがお好き」は何をやっても面白い、ある種のずるい設定が強い生命力となって、現代になっても愛される名作となったのではないだろうか。

 

 

そんな笑いの部分を抜いても、絶対に語らずにはいられないのがマリリン・モンロー演じるシュガーだろう。
注目して欲しいのは彼女が持つ「セクシーとイノセンスさ」だ。
セクシーさの部分で言えばもうこれは映画を見て感じてもらうしかないと思うが、グラマラス甚だしいボディ(なんと言っても胸がすごい)は今の映画界には居ないのではないだろうか。
初めて彼女を見るダフネも文字通り彼女を舐め回すように見て
「あの足の動き、バネ入りだ!!見ろよあのけつ、モーター付きだ!!」と興奮を隠さない。
そして何と言ってもセクシーという言葉だけでは表わせないのが彼女の一番の魅力だ。
それが彼女の持つイノセンスさ、だろう。
セクシーはもちろんセクシーなわけだから、こちらとしてはどうしても舐め回すように見たくなってしまう。
でも、彼女からは「舐め回して見ても良いんだよ」となぜか許されているような雰囲気が漂うのだ。
筆者のようにしょうもない男を許してくれるような、優しさのような、何も知らない無垢さのような、そんなイノセンスな彼女の魅力が、抑えようにも抑えられないという具合に溢れ出ている。
それは彼女がそう演技しているから醸し出されるのか、それとも彼女の持って生まれた資質なのか、それともそれこそ名匠ビリー・ワイルダーの手腕なのか、それは分からない。
セックスシンボルとして語られる事が多い彼女だが、あまりにも容姿が先立って評価されるので演技の方はちょっと…という印象がある人も多いかもしれない。
しかし、それはとんでもない。
この映画を見るといかに彼女がこの映画に無くてはならなかったのかが分かる。映画に彼女がいるだけでどんなにその映画に魅力が加わるかが分かる。
言葉でうまく表現できないが、この映画、全編に渡ってトニー・カーティスとジャック・レモンのおかま演技はもちろんとても楽しい。
でもいつのまにか「いつマリリンが出てくるんだろう」とウキウキしている自分がいることに気付くのだ。
それは決してセクシーなシーンを楽しみにしているわけではない。
彼女が登場するたびに画面全体にチャームが溢れる。それはもちろん彼女の演技の賜物でもあるだろうし、無理矢理にテクニックに例えるならそれは細かな目の動きであり、細やかな声の抑揚だったりするのかもしれない、そして彼女が生まれ持った資質でもあるだろう。
それらが完全に混ざり合って、彼女の目線がカメラをロックするたびに、こちらの脳は完全にジャックされる「いつマリリンが出てくるんだろう、いつマリリンが出てくるんだろう」頭の中でそんな言葉が否応無くリフレインされてしまうのだ。

 

彼女の魅力、演技についてまさしくこの映画の監督ビリー・ワイルダーはこう語っている。
「現場には二日酔いでフラフラになって来たり、ヒステリーを起こして泣き出す。
もう二度とこんな女優使わない、と何度思ったことか。
でも演技が始まるといつもこう思う。
「次もマリリンで行こう」
それぐらい彼女の演技、相手のリアクションに合わせる能力は素晴らしい。
昨日怒り狂っていた自分を忘れるくらいにね。」
演技の技術的な面でも名匠ビリー・ワイルダーにここまで言わせる能力を持ち合わせていたのだ。
もちろんこの映画を見ればその魅力、能力を深く楽しめることができるのだから是非とも実際に見ていただきたい。
こんな長々と書いていて恐縮だが、マリリンの魅力こそ「百聞は一見にしかず」だ。

 

少し余談だがDVDの特典映像も素晴らしい。
特にガールズバンド役の人々が撮影当時を振り返るというコンテンツが収録されているのだが、脇役の彼女たちにとってもこの映画がいかに大切なものかという事がよく分かる。
マリリンが歌うシーンを前にして何時間も楽屋から出てこない彼女を誘き寄せるために、ビリー・ワイルダーが他の役者にその歌を歌わせ、「歌の部分だけ差し替えられる!!」と思ったマリリンが慌てて楽屋を飛び出し、一発で歌シーンを撮った、という話はビリー・ワイルダーの映画製作者としての手腕や、マリリンの知られざるパーソナリティーが垣間見えてとても興味深い。

 

そんな撮影の裏話なんかを聞いているとますますこの作品全体が愛おしく感じられてくる。
そして何度も何度も見返して、何度も笑って、何度も愛おしさを強めるのだろう、女装姿のバカな男二人に、可愛いマリリンに、そして彼らを支えたこの映画全てに。
きっと多くの人にとってそんな存在になる映画だろう。

 

笑いのセンスは今も昔も変わらないのだろうか?
当たり前のことだが、ある部分では変わるし、ある部分では決して変わらない。
今では全く笑えないコメディもあるだろうし、今でも腹を抱えて笑えるコメディだってある。
どちらが優れているなんてことも言えない。
その時代に合ったものを作るのだって大事ことだ。
でも50年以上経った今でも笑えて、そして作品全体を愛おしく思える映画はこの「お熱いのがお好き」の他にそう多くはないのではないかと筆者は思うのだ。

アル・パチーノ「カリートの道」 ブライアン・デ・パルマ節は炸裂してなんぼだから!

黒澤明,映画,夢,生きる,宮崎駿,北野武 アル・パチーノのギャング映画と言えば、「ゴッドファーザー」サーガ、もしくは「スカーフェイス」ときますよね。今回は、いい作品ではあるんですけど、少しアル・パチーノギャング映画の中では影が薄い感がある作品「カリートの道」です。以下ネタバレありゴッドファーザーより好き個人的には、「ゴッドファーザー」より好...

≫続きを読む

「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」はラブストーリーではありません!アルパチーノ...

黒澤明,映画,夢,生きる,宮崎駿,北野武 アル・パチーノは大好きなんですが、ずっと観ずにいました。この作品。観てみると、題名から勝手に想像していた内容とは全然違うではありませんか。勝手に初老のおじさんの恋物語をイメージしていました。しかし、内容は若者と老人の心の交流でしたね。アル・パチーノはこの映画で念願のアカデミー賞主演男優賞を獲得してい...

≫続きを読む

「アメリカンビューティー」 ケビン・スペイシー

黒澤明,映画,夢,生きる,宮崎駿,北野武 ケビン・スペイシー主演でアカデミー賞を獲った「アメリカン・ビューティー」。この映画は、出だしは分かりやすいですね。主人公が丁寧に登場人物を説明してくれて、親切な映画です。というのも、前日はアンドレイ・タルコフスキーの「惑星ソラリス」を観たので、それと比べると、この映画は分かりやすいことこの上ないので...

≫続きを読む

「キャッチミーイフユーキャン」はディカプリオのコスプレ映画だ!

黒澤明,映画,夢,生きる,宮崎駿,北野武 スピルバーグ×トム・ハンクスのコンビにレオナルド・ディカプリオが加わり、実在の詐欺師とFBIの追いかけっこを描いたドラマ。「レオの目には、いたずら好きそうな才気が煌めいているんだ。彼のパフォーマンスはものすごく洗練されている。フランクがあらゆる危機を切り抜けられたのは80%のパフォーマンスと、たった...

≫続きを読む

マイノリティリポート トム・クルーズ×スピルバーグ

マイノリティリポート,トム・クルーズ,スピルバー マイノリティ・レポート 各サイトレビューまとめYahoo!映画 3.67点 評価件数 1022件・トム・クルーズの代表作・世界観、映像、ストーリーすべて良し・原作の世界観を見事に再現・理解が難しい・さすがはスピルバーグ映画.com 3.5点 2037人・設定が面白い・ストーリーに飽きがこなかった・2...

≫続きを読む

「アンタッチャブル」個性派デパルマが撮った王道娯楽映画

黒澤明,映画,夢,生きる,宮崎駿,北野武 各サイトレビューまとめYahoo!映画 4.29点 評価件数 793件・デ・パルマの正義・デニーロ、やっぱり。・デパルマ最高・面白いけど・バタくさい・昭和最後の大衆娯楽映画・普通・エンニオ・モリコーネ・本当にこの監督は・豪華配役すぎるデパルマ映画映画.com 3.9点 1095人・渋い男たち・ショー...

≫続きを読む

アル・パチーノVSロバート・デ・ニーロ 「ボーダー」 のオチは見え見えだが…

各サイトレビューまとめYahoo!映画 3.15点 評価件数 273件・大事なのはバランスと配慮・2人がもったいない・素直に楽しむ・ストーリーが残念・まあまあ映画.com 3.0点 254人・デニーロにパチーノ・ここまでひどいなんて…・渋い刑事もの・脚本カスでも大物2人で持つ・往年のバンドの再結成の...

≫続きを読む

黒部の太陽 大出水のシーンは日本映画史にのこる命がけカット!ミフネと裕次郎が挑ん...

『黒部の太陽』 各サイトレビューまとめYahoo!映画 3.81点 評価件数 105件・撮影の過酷さはわかった・振り返る男たちのロマン・男の一生の仕事とは何か・まさに偉業・改めて思う、電気は大切に。・日本映画の底力・力作、しかし監督は苦労している・日本映画の誇り・ただただ長い映画.com 3.7点 ...

≫続きを読む

無限の住人を見て思う木村拓哉と高倉健に通ずる共通点

今回は木村拓哉を観ようということで鑑賞。今まで、木村拓哉というタレントにちょっとした嫌悪感を持っていたため、ドラマ、映画ともにほとんどキムタク出演作品はみていない。あとは三池監督は「殺し屋1」などが好きだったので、監督への期待もあって鑑賞。途中で、鑑賞がだるくなってきて切ろうとも思ってしまいましたが...

≫続きを読む

沈黙-サイレンス- マーテ・スコセッシが信仰とは?善悪とは?宗教とは?を観る者に...

大好きなマーティン・スコセッシがメガホンを取った「沈黙-サイレンス-」を鑑賞。原作は遠藤周作の小説「沈黙」。完全ハリウッド映画として、江戸時代の日本を舞台に、布教の為に日本に訪れていた神父たちの苦悩を描いた大作。スコセッシ監督が28年間あたためていたという企画。映画のテーマは深く深く、信仰とは?人間...

≫続きを読む

「君の名は。」個人的レビュー。品のある堅実なセンスで音と絵と文字をコーディネート...

新海誠監督『君の名は。』は日本だけじゃなく、世界中で大ヒットした作品となった。劇中で、お互いが、「君の名前は?」と言っているのがちょっと気にかかります。いや、実際高校生が「君の名は?」って言わないからわかるんですけど、タイトルをバシッと決めている以上、肝心な劇中で意訳的な感じで言葉が誤魔化されるのが...

≫続きを読む

ラ・ラ・ランド 空前絶後のファーストシーンと涙のラストシーン!この2シーンを見...

ストーリーがありふれていようが、ストーリーが破綻していようが、映画に関しては二の次でいい。唸るようなストーリーテリングを感じたいのなら、小説を読めばいい。良い映画とは、つまり映画にしか出来ない表現方法を駆使して、見る人の心を揺さぶったかどうかである。そういう意味では、『ラ・ラ・ランド』は近年見た映画...

≫続きを読む

機動戦士ガンダム THE ORIGIN「青い瞳のキャスバル」主役はもはやハモンさ...

ガンダムファンは基本的に一年戦争ファンである。ガンダムの原点はやはり一年戦争なのである。その一年戦争にまつわるというか、一年戦争へと繋がっていく宇宙世紀0057頃から0079あたりまでをシャアを主役として描いている。@が「青い瞳のキャスバル」Aが「哀しみのアルテイシア」Bが「暁の放棄」Cが「運命の前...

≫続きを読む

OLD BOY オールドボーイ カンヌでグランプリを受賞した韓国映画史に残る傑作...

オールドボーイ バイオレンス、エロ、タブー、を駆使して2004年のカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した韓国映画史に残る傑作。元ネタは日本のカルト的人気を誇る土屋ガロン原作のマンガ「オールドボーイ」である。15年もの間、監禁された男の壮絶な復讐劇。なぜ監禁されたのか?よりもなぜ15年で解放されたのか?俳優...

≫続きを読む

アウトレイジ 北野武監督流の一流のヤクザムービー 役者ビートたけしはどうなのか?

北野武監督の15作目の作品「アウトレイジ」。キャッチコピーは「全員悪人」。ということで、まずこの映画、キャッチコピーが秀逸でしたね。過激なバイオレンスが売りの各サイトレビューまとめYahoo!映画 3.74点 評価件数 2288件・大友組と村瀬組のもめごとの連続が楽しすぎる。あきない。・とにかく桔平...

≫続きを読む

北野武監督アウトレイジビヨンド『ゴッドファーザーU』オマージュシーン?が個人的に...

世界のキタノが描く日本の極道バイオレンスムービー世界基準「アウトレイジ」シリーズの2作目。ゴッドファーザーサーガでも、バックトゥザフューチャーサーガでも、3部作は2作目が一番面白いという定説どおり、本作品も前作を上回る面白さではなかったかなと思います。各サイトレビューまとめYahoo!映画 3.67...

≫続きを読む

ラストのセリフがあるがゆえに、北野武監督『キッズリターン』は永遠の青春映画の傑作...

事故から復帰した北野武のい復帰第1作目。それまでの難解なキタノ映画ではなく、分かりやすい内容のストーリーであり、興行的にも成功を収めた。主演の金子賢と安藤政信の演技が素晴らしい。各サイトレビューまとめYahoo!映画 4.38点 評価件数 746件・性格的には正反対なのであるが、どういうわけかいつも...

≫続きを読む

『ソナチネ』は北野武に眠っていた自殺願望を描いた作品!?

北野武監督4本目の作品。前作の『あの夏、いちばん静かな海。』のカットタッチと1作目『その男凶暴につきの』暴力描写が混在した映画。北野武の芸術性と暴力性が合わさった作品。後にベネツィアでグランプリを獲得する『HANA-BI』に繋がる作品。黒澤明も、淀川長治もこの作品を絶賛。ロンドン映画祭やカンヌ映画祭...

≫続きを読む

「菊次郎の夏」北野武は日本のお笑い文化の笑いを映画に織り込める唯一の人

北野武監督発のロードムービー。99年度カンヌ国際映画祭正式出品作品。中年のガラの悪いどうしようもない男と母を探す少年との一夏の旅。ジャンルでざっくりわけると、コメディ映画と言い切っていいのではと思います。北野武が、この映画で表現したかった優先順位はおそらく、1位 ボケる2位 映像テクニック3位 優し...

≫続きを読む

北野武の『あの夏、いちばん静かな梅。』はキタノブルーのはじまりでもあり到達点

個人的レビュー 3.7点ストーリー自体は、実はなんてことないんですが、最後まで引き寄せられて観てしっまうのは、やはり北野武が映像作家として、淀川長治さんが言うように、感覚がいいのでしょう。映像と音との使い方が感覚いいのでしょう。映像はまさにキタノブルー。ここまで画面が青いと、そらそういう風に言われま...

≫続きを読む

【ケッセルラン】チューイ、ファルコン号との出会いは、ハン・ソロの『祭りの準備』か...

米映画『ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー』(以下、『ハン・ソロ』)は2018年に公開された「スターウォーズ正史」のスピン・オフです。愛機ミレニアム・ファルコン号を駆って銀河を飛び回る一匹狼の運び屋(密輸も)。その名を轟かせるようになるまでの、波乱に満ちた雌伏期間を描いています。正史で活躍するル...

≫続きを読む

黒澤明作品の影響を受けた映画【荒野の用心棒】

黒澤明監督の名作時代劇が、『用心棒』。流れ者の浪人が圧倒的な強さで、田舎町を乗っ取っている無法者たちをズバズバ切り倒していく、爽快な作品です。ところがこの『用心棒』の配給元である東宝から、著作権問題で訴えられた西部劇が存在します。それが『荒野の用心棒』です。黒澤明『用心棒』の舞台をそのまま西部開拓時...

≫続きを読む

黒澤明作品の影響を受けた映画【風とライオン】

1975年に制作された、『風とライオン』(The Wind and The Lion)という映画があります。この映画を監督したジョン・ミリアスは、たいへんな黒澤明ファンとして知られています。本作『風とライオン』にも、あからさまな黒澤明映画からの影響がみられる名場面があるのですが、まずはそのシーンの紹...

≫続きを読む

アルフレッド・ヒッチコック監督の「レベッカ」は姿形のない恐怖を描いた恐ろしい映画

人間は時に、姿形の無いものに必要以上に怯え、それにとらわれ、まるで呪われたかのようにそれらから逃れられなくなってしまうことがある。別に姿形がないんだから、そんなもの気にしなければいいじゃないか。と、言われればもちろんそれまでだが、なかなかどうして一度気になってしまうと頭から離れない。いつの日か見たホ...

≫続きを読む

麗しのサブリナ

大人になると、自分の本当に好きなものはなんだろう…と悩みながらも、そこまで気持ちの入らぬ職に就き、いつのまにか夢も目標も無かったことにして、日々の忙しさに忙殺されている人は多いのではないだろうか。誰だって子供の頃には少なからず夢はあっただろう。サッカー選手になりたい、花屋さんになりたい、役者さんにな...

≫続きを読む

コメディーの名手ビリー・ワイルダー監督「お熱いのがお好き」

笑いのセンスというのは今も昔も変わらないのだろうか?時々そんなことを考える時がある。というのも、昔テレビで往年のコント番組が再放送かなんかで流れていた時、両親は腹を抱えて笑っていたけれど自分には全く面白さがわからなかった。ベタな笑いばかりだし、笑いを狙ったひょうきんな顔は笑いを通り越してなんだか腹が...

≫続きを読む

ビリーワイルダー「サンセット大通り」〜怖くて、悲しくて、でもちょっと可笑しくて〜

映画を見るときは誰かと一緒に見るとその映画をより楽しめることだろう。一緒に見ればその映画の感動や興奮を共有できるし、鑑賞後にはあーでもないこーでもないと意見を交換できる。なによりも誰々と観た映画だという思い出が一つの映画の記憶に付加される。しかしこの世界に存在する数多くの映画には決してそうとも言えな...

≫続きを読む

「見知らぬ乗客」ヒッチコックが無数に持つ「恐怖の手札」の一端を観る

昔に比べてホラー映画というものはどんどんと怖さを増してきている。幽霊たちはテレビから飛び出したり、携帯に電話をかけて呪ったり、青白い肌に真っ黒な目をするメイクアップスキルまで身につけ日々人々に恐怖を与えている。おまけに彼らが出てくる瞬間は「ドーン!!」という大きな効果音が鳴り響き、心臓が一瞬止まるの...

≫続きを読む

オーソン・ウェルズ「市民ケーン」はなぜ映画史上最も偉大な作品なのか

市民ケーン「市民ケーン」はなぜ映画史上最も偉大な作品なのか「映画評論家が選ぶオールタイムベスト」や「最も偉大な映画BEST50」などで頻繁に1位に輝いている作品がある。それが「市民ケーン」という映画である。そこまで映画に詳しくない人であれば「市民ケーン?」はて?初めて聞いたな…そんな印象をもつ人も多...

≫続きを読む

マーティンスコセッシ「タクシードライバー」孤独な男から生まれた孤独な男の物語

筆者は決して友達が多いわけではないが、割合周囲の人から相談を持ちかけられる。「好きな人とうまくいかない」「彼氏、彼女にふられた」「こんな辛い出来事があった」無愛想で無表情な自分にいったい何を期待しているかは分からないが、なぜだかこんな相談をよくされる。一応は自分を頼ってくれているのだからと思い、こち...

≫続きを読む

「ゴッドファーザーPART2」家族を大切にしないやつは男じゃない

「ゴッドファーザーPART2」はタイトル通り名作「ゴッドファーザー」の続編だ。PART1でマフィアのドンとなったマイケルと、そのマイケルの父ヴィトの若き日が交互に描かれる構成の映画になっている。マイケルがマフィアのドンとなりファミリーの勢力を拡大していく毎に冷酷になっていくのに比べて、ヴィトはマフィ...

≫続きを読む

ブライアン・デ・パルマ監督「スカーフェイス」俺の武器はガッツと信

この世に生きる人々の収入を10段階に分けると、トップ10%の合計収入はその他90%の合計収入より高い、そんな話を飲み屋でしたり顔で語るインテリ気取りをたまに目にする。翌日にはそんなインテリ気取りもインテリを気取られたやつも、隣の卓で飲んでたやつも店の前を通り過ぎて行ったOLも部長も課長も皆満員電車に...

≫続きを読む