黒澤明「生きものの記録」 三船敏郎が狂気の老人を怪演!音楽担当早坂文雄の遺作になった。

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生きものの記録

黒澤明 生きものの記録

 

初期の黒澤作品のほとんどの音楽を担当し、黒澤の親友として良き相談相手にもなっていた早坂文雄。

 

彼は昭和29年に行われたアメリカのビキニ環礁に核実験で、死の灰が予想よりも遠くまで飛び散り、第五福竜丸が被災したときに、「こう命をおびやかされちゃ、仕事もできねぇ」と黒澤に言ったという。

 

その言葉が強く心に残ったという黒澤が、反核映画として作ったのがこの作品である。

 

黒澤は70歳の主人公役を、ただの老人のノイローゼと思われないように、当時35歳の三船を起用して、エネルギッシュな老人を演じさせた。

 

三船もそれに応え、見事な老け役を演じきった。

 

黒澤が語る、

「これは三船君の大傑作だと思うんだけれども、撮影が終わって最後に三船君のいうことがうまい。あの主人公の気持ちがいまだに俺にはさっぱりわからないって(笑)」

 

 

また複数のカメラで撮影するマルチカム方式を、本作品では本格的で取り入れて撮影された。

 

本作品撮影中に早坂が結核の為にこの世を去り、この作品が早坂の遺作となった。

 

黒澤はショックの余り、一週間仕事を休んだという。
「片腕どころか、両腕を取られた気がした」と語った。

 

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映画評論家の佐藤忠男は封切当時に、失敗作とする批評を書いたことで、果たしてそれが正しかったのかと疑問に思い、もう一度観返し、感想を述べている。

「これはやはり、成功した作品ではないと思った。しかし、失敗作であるにもかかわらず、これは黒澤明にとって、もっとも重要な作品のひとつであり、興行的の成功した彼の作品などより、ずっと貴重な、誠実な魂をもった作品だと思った。」※1

 

核や原発に対する黒澤明

犯罪者やヤクザに対する黒澤明の見解は一貫してその存在を全否定している考え方である。

 

それと同じように、いやそれ以上に、核兵器や原子力発電所などへの嫌悪感もまた凄まじいものがある。その考えも黒澤は映画にしている。核兵器については『生きものの記録』、原子力発電所については『』の赤富士という作品で描かれている。

 

黒澤久雄
「父は人間は変わらなくちゃいけない、変わらなくちゃいけないとと思って映画を作っていた。父の中で原発問題は大きい位置を占めていました。原発というより原子力というものに対して。」

 

スクリプター野上照代さん
Q 黒澤さんて何でこんな原発の問題やるの?」って誰か聞かなかったんですか?

 

野上「それは『生きものの記録』の時からのテーマですからね。そういうのを問題にしないことを恥と思うようなモラルはありますよね。あの人の場合はやっぱり」
「だから原発もそう、本当に『生きものの記録』からずっと普段でもそれは怒ってましたから。」

 

 

橋本忍
Q 黒澤明が『生きもののの記録』とか『赤富士』の原発爆発などを作ったのは、同じ年代としてわかる気がしますか?

 

橋本「まあ、当然じゃないかな。彼の戦争時代を経験しているからね。その中で一番嫌な部分だったと思うから。」
「人は一番重要な問題には触れないっていうことは言っていたよね。」

 

生きものの記録の台本に黒澤監督からスタッフに向けられた言葉がある。

大方の人はそれから目を背けている。問題があまりにも大きく恐ろしいからだ。そこに人間の弱さと愚かしさがあるのではないか。

 

 

 

娯楽映画「七人の侍」のあとに公開された本作品は、散々な興行収益だったいう。

 

社会派映画も実はよく撮っているんですが、どうしても印象が薄いんですよね。
これもいい作品なんですが、賛否両論がある作品です。

 

ノイローゼの主人公(ノイローゼのような扱いを受けている)に感情移入が出来なければ、見ていてあまり面白くない人がいるのはわかりますし。

 

核兵器に本気で恐怖する人間と、臭いものには蓋をするかのようにそれについてあまり深く考えない人間。

 

本当に怖い人間ってどっち?そんなことを言いたがっているような気もします。

 

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あらすじ

 

原田は、敗者でありながら、裁判所の調停委員もしている。
ある日、彼は変わった事件を担当することになる。

 

工場社長の中島は、全財産を出してブラジル移住を計画していた。
核兵器の脅威から脱出する為である。。

 

中島の親族は、彼を準禁治産者とする申し出を提出し、
原田は、中島に同調するも申し立ては認める以外はなかった。

 

喜一はある日倒れる。夜中に意識を回復した喜一は工場に放火し…

 

制作:本木荘二郎
脚本:橋本忍 小国英雄 黒澤明
撮影:中井朝一
美術:村木与四郎
照明:岸田九一郎
音楽:早坂文雄
助監督:丸林久信 野長瀬三摩地 田実泰良 佐野健
出演:三船敏郎 志村喬 三好栄子 清水将夫 根岸明美 上田吉二郎

※1 文藝春秋発行 小林信彦著書 「黒澤明という時代」より抜粋

 

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