黒澤明×三船敏郎「醜聞(スキャンダル)」は、マスコミへの怒りと恐怖から作られた!

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醜聞 スキャンダル

親友である松竹の監督木下恵介の仲介で、始めて大船撮影所で監督した作品。

 

つねづねジャーナリズムの強引な取材を不愉快に思っていた黒澤が、ある日電車の中刷り広告のセンセーショナルな見出しに呆れ返った。

 

言論の自由が当然だが、その自制のない逸脱をどうするのか?こんなことが赦されてはならない、今のうちに叩き潰さねばえらい事になる、と思い製作に至ったと語る。

 

女性映画や小市民劇といったホームドラマを得意ちする松竹映画と、ダイナミックで男くさい黒澤作品では、カラーが会わなさそうであるが、本作品では「素晴らしい日曜日」でもみることが出来た黒澤流のロマンティシズムが発揮され、面白い作品に仕上がっている。

 

マスコミの暴力的なまでの行き過ぎた報道に怒りを覚えていた黒澤は、これに抗議する作品として企画されたが、結果的には主人公に雇われた悪徳弁護士が改心するまでの物語となった。

 

この作品で黒澤は後に「日本一の助監督」と評した野村芳太郎と出会う。

 

志村喬演じる弁護士のキャラクターは、飲み屋でたまたま隣にいた男をモデルにしたという。

 

「そのおっさんは娘を話を盛んにしていて、あのおっさんの言ったことをそのままセリフにしたりしてるんだよ。」

 

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あらすじ

 

バイクを愛する画家、青江は、絵を描くために山へいく。そこで有名な声楽家美也子と出会い、
一緒にいるところを、雑誌社のカメラマンに撮られていまい嘘の熱愛報道が出てしまう。

 

素直でハッキリとした男、青江はこれに激怒し、雑誌社に乗り込んで編集長殴り飛ばしてしまう。
更に騒ぎが大きくなり、収集がつかない騒ぎに。
そんな中、青江の下に弁護士が現われた…

 

この作品で弁護士役を演じる志村は「もっとも好きな役のひとつ」と自分のお気に入りの役であることを言っている。

 

この弁護士が非常に弱い。人間らしいというか、見ていて腹立たしい気持ちにもなるんですが、演じる役者が志村喬といこともあり、なにか共感できる部分もあるんですね。

 

この「醜聞」や「酔いどれ天使」の久我美子のように、作品内で若くて美しい女性を無垢な素直な心の象徴として登場させています。
これをすることで、志村喬演じる弁護士の弱さや汚れてしまった心が浮きぼりになってきて、登場人物にコントラストがついて感情移入しやすくなるんですね。

 

北斗の拳って漫画でリンという登場人物がいるんですが、これもその役割を持たせていると、当時のジャンプ編集長だった堀江氏が語っています。

 

世紀末の荒れ果てた想像を絶する悲惨な社会で、そこで生きる一人の普通の少女リンを置くことによって、そこで起きる悲惨な現状がリアリティを伴って読者に伝わってくるんだそうです。

 

とにかくこの作品も脚本は練りに練られているので、よくある法廷ものとは一線を介してします。
最後の最後まで目が離せません。事件ドラマとしても人間ドラマとしても。

 

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前の作品 「野良犬」  黒澤明×三船敏郎コンビ最初の傑作

 

次の作品 「羅生門」 手柄は三船敏郎ではなく、カメラマン宮川一夫!

 

 

企画:小出孝 本木荘二郎
製作:小出孝
脚本:黒澤明 菊島隆三
撮影:正方敏夫
美術:浜田辰雄
照明:加藤正夫
音楽:早坂文雄
助監督:荻山輝男 小林桂三郎 野村芳太郎
出演:三船敏郎 山口淑子 志村喬 千石規子 桂木洋子 北林谷栄 左ト全

 

黒澤明 醜聞(スキャンダル)

 

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