刑事映画の傑作「野良犬」  黒澤明×三船敏郎コンビ最初の傑作

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野良犬

「メグレ警視」シリーズなどの探偵小説で有名なフランスの社会派作家、ジョルジュ・シムノンの作品が大好きな黒澤が、シムノン風に撮ってみようかと脚本に着手。

 

だが、なかなか書けずに四苦八苦していたところ、巡査がピストルを盗まれたという実話を聞き、それを小説風に書き上げた作品がこの「野良犬」。

 

しかしその後それを脚本家するのに50日以上かかったという。

 

ピストルを獲られた若い刑事と、そのピストルを使って強盗殺人事件を犯してしまう男。
お互いに復員途中で、荷物を盗まれた同世代の2人だが、1人は刑事に1人は犯罪者となる。

 

この善悪紙一重の対比と、老練な刑事との師弟関係が絡み、これぞまさに黒澤映画となっている。

 

クランマックスは、ピアノが聞こえるのどかな新興住宅地で、刑事と犯人の対決が繰り広げられる。

 

誰かが弾いているピアノの美しい調べをBGMに、犯人と刑事の人生をかけた壮絶なバトルが行われている。
こういった自然なBGMの使い方がされたのは、もしかしたらこの作品が初めてかもしれない。

 

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善と悪、老と若、静と動といった相反するものを絶妙に組み合わせ、敗戦後の東京の、混沌とした風俗を見事にとらえた社会派サスペンスの傑作となった。

 

作品の中で、老刑事がアイスキャンデーを食べながら、ピストル屋の女を取り調べるシークエンスは、黒澤フリークのジョン・ミリアスが「デリンジャー」の中でオマージュとして再現している。

 

本作品でデビューした淡路惠子が可愛いです。若さ爆発でいい感じの色気も伴っています。

 

主人公が闇市を歩くシーンは、助監督の本多猪四郎が、カメラマンと二人で本物の闇市を隠し撮りしたという。どうりでこの闇市で表現されている画には、怖さがあるわけで。

 

後楽園球場でのシーンは、実際の巨人対南海の試合映像が使われており、川上哲治、青田昇、千葉茂等の当時の選手の姿が映っている。

 

こうして見てみると、主役の三船敏郎や志村喬はもちろんのこと、チョイ役の役者さんなどの演技も達者で、映画自体のクオリティを底上げしているひとつの要因です。

 

冒頭の野良犬が吠えているカットも素晴らしい。
このカットについて黒澤がエピソードを語っている。

 

犬を使ったシーンを撮ったときのことなんて今でも腹が立つよ。動物愛護協会のおばさん、アメリカのね。「狂犬を撮るために、犬に狂犬病の血清を注射した」なんてわけのわからない抗議をしてきてね。あれは野犬狩りで捕まった犬を借りて、狂犬病のメイクアップして撮ったんだよ。夏の暑い日に、自転車で新東宝のグラウンドをグルグル回らせて、ハアハアさせて、肉をつるしてってやってね。戦争直後だから日本人は残酷って思われてて、大変だったよ。」

 

画像を重ね合わせる編集はいまじゃ何も珍しくもない編集技法ですが、この野良犬が本家ともいわれています。フランシス・コッポラの名作「地獄の黙示録」の冒頭部分もこの作品の影響かもしれないですね。コッポラは黒澤フリークであったわけですから。

 

最近改めてデヴィッド・フィンチャーの「セブン」を見たのですが、主役は血気盛な若手刑事と経験豊富なベテラン刑事。ブラッド・ピットとモーガン・フリーマン。
「こういうコンビよくあるベタなパターンだな」と思っていたんですが、その本家はやはりこの「野良犬」に遡るみたいです。
刑事ドラマの一つのテンプレートを作り上げてしまったということですね。

 

それにしても、黒澤作品の中じゃ今一つ人気も評価も受けていない気がして、ちょっと残念です。

 

「野良犬」「悪いやつほとよく眠る」、この辺りは人間が持つ避けられない悲しみや憎しみを描いていて、生まれを呪い、必死で努力するも報われない人間が描かれています。ひょっとしたらこれが本当の黒澤ヒューマニズムなのかもしれません。

 

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あらすじ

 

黒澤明 野良犬

 

真夏の暑い日、若い刑事の村上はバス車内で、拳銃を奪われてしまった。

 

拳銃の中には弾も込められていた為、何か事件が起こったら大変だと焦る村上。
村上は、スリ係りの市川と組むことになり、この犯行に関わった女スリから情報を聞き出す。

 

拳銃ブローカーを突き止めて逮捕するも、その最中にも恐れていた盗まれた拳銃による事件が起こってしまう…

 

 

製作:本木荘二郎
脚本:黒澤明 菊島隆三
撮影:中井朝一
美術:松山崇
照明:岩井長四郎
音楽:早坂文雄
助監督:本多猪四郎 今泉善珠 小野田嘉幹
出演:三船敏郎 志村喬 木村功 淡路惠子 山本礼三郎 三好栄子 川村黎吉

 

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